「妻からのモラハラと暴力」が20年間で増えている

さらに、2000年と2020年とで、夫と妻それぞれの理由の割合の増減差分を見てみます。

夫婦ともに、20年前には割合の高かった「異性関係」や「家族との人間関係」が減少し、妻側で増えているのは「夫の精神的虐待」と「金銭問題」のみ。夫側で増えているのは「妻の精神的虐待」「妻の身体的暴力」と「金銭問題」ということになります。妻の理由では「夫の身体的暴力」がむしろ11ポイントも減少しているのです。

離婚申し立て理由 2020/2000年増減比較

家庭内での配偶者への暴力、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)問題といわれると、反射的に「夫から妻への暴力」と解釈しがちですが、実情は異なります。

内閣府が3年おきに実施している「男女間における暴力に関する調査」というものがあります。そちらの調査結果から、2005年と2020年とで年代別に配偶者からの「身体的暴力」と「心理的攻撃」をこれまで受けた経験があるかどうかを調べたものを比較してみましょう。

夫婦間の暴力 2005-2020年の実態比較

小言、嫌味、皮肉も「精神的虐待」になりうる

これを見ると、2005年は、すべての年代において、身体的暴力も心理的攻撃も妻の被害率が夫のそれを上回っていますが、2020年になると、身体的暴力では20代で妻より夫のほうの被害率が高くなっています。心理的攻撃でも20代は夫の被害率が高く、30代でも同等となっています。これは、前述した離婚理由における、妻による夫への身体的暴力と精神的虐待が増えていることと符合します。妻の被害に関しても、身体的暴力被害は減っているのに対し、心理的攻撃が増えている点も一致しています。

「精神的虐待」または「心理的攻撃」とは、明らかな罵詈雑言や見下し発言だけではありません。小言、嫌味、皮肉であっても、または、本人的には加害意識がない論理的に筋の通った主張のつもりでも、それを日常的に繰り返すことで相手が精神的苦痛を感じたとすれば、それも十分離婚が認められる理由に該当するようです。