デザートでなくても好物であれば胃は伸びてふくらむ

一方、メインのおかずでおなかがいっぱいになっても、まったく違う風味の好物のデザートが現れた場合、摂食中枢からオレキシンという摂食を促す物質が分泌されます。このとき胃は、内容物の消化を促進させて新たなスペースをつくることがわかっています。

「脳の働きで食欲に関する感覚的な反応が生じて、胃の状態が変化し、満腹であってもさらにデザートが食べられる」という現象にいたるわけです。小皿料理の食べ放題などでつい食べ過ぎる現象も、この脳の働きで説明ができます。目の前にずらりと違う風味の料理が並ぶと、「これは別腹」「あれも別腹」と脳が感知して食べられるようになるのです。

胃は食べものが入ってきたら、伸びてふくらみます。その動きも満腹中枢に伝えられて食欲は抑えられるのですが、好物に触れた場合は摂食中枢の作用のほうが上回ると考えられています。

ということは、甘いデザートではなくて、おかきやポテトチップスなどしょっぱい系のお菓子や、飲食のシメにラーメンやうどんを……というときでも同じ現象が起こるわけです。それまで食べたおかずと違う味わいで、好きな食べものなら起こりえます。

もうひとつ、好物と食欲の関係が影響しています。好物を食べると、脳では多幸感をもたらすといわれる「βベータ-エンドルフィン」や、快楽の感情や意欲を駆り立てる「ドーパミン」という神経伝達物質が分泌されます。過去に好きなものを食べて気分が満たされた体験が、幸福感を得られるという記憶となって食欲を呼ぶわけです。

「別腹は食べ過ぎサイン」と認識することが大切

この話を患者さんにすると、皆さん、「思い当たる」と言われます。そして、「『デザートは別腹』を我慢する方法はありますか」と聞かれます。

三輪洋人『胃は歳をとらない』(集英社新書)
三輪洋人『胃は歳をとらない』(集英社新書)

おなかいっぱいに食事をしたあとの「デザートやラーメンは別腹だから食べる」という行為は、胃もたれ、胸やけの苦しみのもとであり、また1食の適量を超えるカロリーオーバーとなるのは間違いありません。これを防ぐには、「デザートは別腹と思うのは、実は食べ過ぎのサインだ」という認識がポイントになります。

同時に、「本当にまだ食べる必要があるのか?」「あとで胸やけがするぞ」「後悔しないか?」と自問してください。それでも我慢は難しい、と思うこともあるでしょう。夜に飲み会や会食の予定がある場合は、「今日はデザートやシメのラーメンまで食べるかもしれない」と朝から想定しておき、朝食や昼食で少しカロリー摂取を減らしておきましょう。

または、その飲み会や会食時の1食全体でのカロリーが過多にならないように、料理やごはん、パンを食べる量を少しずつ減らすといった工夫をしましょう。こうした食事どきの工夫はそう難しいことではありません。数回くり返すと、「慣れました。胃も腸も軽くなって、食べ過ぎた罪悪感もなくなるので楽に続けられる」という患者さんも多いのです。

【関連記事】
「ワイン離れが止まらない」フランス人がワインの代わりに飲み始めたもの
体重が減らない原因は"動物歩き"にあった…「やせる3拍子ウォーク」3つのポイント
40代で一気に「顔の老化」が進む人が毎朝食べているもの
「整形外科に行っても慢性腰痛は治らない」痛みの専門医が断言する"これだけの理由"
「野菜たっぷりなら良いわけではない」糖尿病患者にほぼ確実に不足している"ある食べ物"