LG21乳酸菌が含まれているヨーグルトは胃の働きを助ける
医療の現場では、ヨーグルトについての質問も毎日のように受けています。「種類がたくさんあって選べない。胃のためにはどれを食べればいいの?」「ヨーグルトはどれぐらい食べるといいの?」「冷たいまま食べて胃腸に悪くない?」などさまざまです。
多くの研究者がそうした質問に明解な回答を出したくて、胃や腸にヨーグルトが与える影響について研究を進めてきました。最近、LG21というヨーグルトには、胃の蠕動運動を活発にする作用が認められたとの論文が発表されました(*1)。
これは科学的な手法にもとづいた研究です。このヨーグルトが胸やけや胃の重苦しさなどの症状を改善することは以前から報告されていましたが(*2)、蠕動運動の促進と関連している可能性があります。前者の研究は、ラクトバチルス・ガセリ菌という乳酸菌株(LG21)の入ったヨーグルトと、入っていないヨーグルトの無作為化比較試験を経て結果を得ています。
また、LG21摂取群では、自律神経の不調の指標である唾液内のアミラーゼの濃度が低下したことも明らかになっています。このことはLG21が自律神経のパワーを強くし、胃の運動を活発にしている可能性を示唆しています。
また別の研究では、ピロリ菌の除菌の成功率を高めることなども報告されています。そのため、除菌治療の際に、LG21乳酸菌ヨーグルトの摂取を併用する医療機関もあります。すべてのヨーグルトの作用はわかりませんが、胃に関しては、LG21乳酸菌入りのものはよい影響があると言えるでしょう。
質問にあった、冷たい刺激が苦手な場合は、レンジで1分ほど温めてから毎日1個程度を食べるとよいでしょう。
(*1)Ohtsu T, et al. The effect of continuous intake of Lactobacillus gasseri OLL2716 on mild to moderate delayed gastric emptying: A randomized controlled study. Nutrients. 2021;13(6):1852.
(*2)Koga Y, et al. Probiotic L. gasseri strain (LG21) for the upper gastrointestinal tract acting through improvement of indigenous microbiota. BMJ Open Gastroenterol. 2019;6(1):e000314.
「デザートは別腹」は医学的にも証明されている
おなかいっぱいに食事をしたあとでも、好物のデザートを見たらまた食べられる……スイーツが好きな人なら、「デザートは別腹」と言う人は多いでしょう。この「別腹」とはいったいどういう現象なのでしょうか。そのとき、胃はどうなっているのでしょうか。
結論から言って、デザートは別腹という現象は、医学的に本当のことです。食後に、それまでに食べた食品以外の好物を目にしたら、胃の上部(胃底部)にスペースができるのです。そうしてまた食べられるようになるのです。これは脳と胃の働きによって起こります。胃がふたつあるわけではなく、別腹と呼べる空間ができるということです。
そのとき、脳では何が起こっているのかを知っておきましょう。まず、食欲に関して、満腹や空腹を調節しているのは脳の視床下部という部分です。視床下部にある「摂食中枢」は、胃が空っぽになると「おなかがすいたから何かを食べよう」と指示を出します。
一方、「満腹中枢」は、胃が満杯になると「もうおなかがいっぱいになったから食事を終了しよう」と指示を出します。食欲は脳の働きによるわけです。食事をすると、満腹中枢が刺激されて満腹感を得ます。このとき、摂食中枢のほうは抑えられています。
ただしヒトの脳は複雑です。食欲は、食べものの風味、見た目、香り、またそのときの環境、気分、過去のおいしかった・まずかったという記憶などでも変化します。それに、ひとつのおかずだけを食べ続けたときには、実際には胃は満杯ではなくても、「このおかずはもういらない。もう満腹だ」と感覚的に判断するといった特異な満腹感が存在するとの研究報告もあります。