※本稿は、三輪洋人『胃は歳をとらない』(集英社新書)の一部を再編集したものです。
消化にいい食材にはどんな特徴があるか
胃不調、胃疲労時に食べるとよい食材はあるのでしょうか。
実のところ、急性の胃痛、胃けいれんなどがあるときは、食欲はまったくなくて、水を飲むのもつらいでしょう。そんなときは1日3食ほどは絶食して安静にし、消化器官を休めるほうがいいのです。
受診すると医師にもそう指導されるはずです。調子がよくなってきて食欲が出てきたときは、下痢や腹痛の回復時同様に、とにかく消化がよくて酸性度が低く、つまりは刺激が少ない、牛乳やヨーグルトを少し温めたもの、おかゆ、軟らかいうどん、バナナ、リンゴなどを選びましょう。
「消化がよい」とは、「胃の中に滞留している時間が短い」ということです。それが胃にやさしいという理屈は、胃での滞留時間が短いと胃酸の分泌時間も短く、量は少なくなるため、胃に負担が少なく、また胃酸の逆流量も少なくなるということなのです。消化によい食材として、次のポイントごとに紹介します。
(1)キャベジンという成分を豊富に含む
キャベジン(メチルメチオニンスルホニウムクロライド)とは、胃の粘膜を修復する作用や胃酸の分泌を抑える作用などがある水溶性の化合物で、戦後にキャベツのしぼり汁から発見されたことからこの名前がついています。多くの胃腸の治療薬の成分として使われていて、同名の市販薬も知られています。
通称では「ビタミンU」とも呼ばれますが、実はビタミンの一種ではありません。ビタミンと同じような働きがあることからこう呼ばれています。キャベジンはキャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、アスパラガス、カリフラワー、ナノハナ、トマトなどの野菜や青のりに豊富に含まれます。水溶性のため熱に弱い性質があり、熱すると流出します。温野菜として調理すると煮汁に溶け出るので、煮汁ごと飲みましょう。