車窓から見ると「邪魔」で「イライラする」自転車
「なんだか最近、テレビや新聞なんかでさかんに『これからは自転車は車道だ』って言うんだけどさ。邪魔くさいよね、チャリが車道にいると」
とまあ、この数年というもの、こういう話を周囲からよく聞く。なるほど自転車についての認識はともかく「自転車は車道」。ようやくそこまできたか。じつに慶賀。こういう方々、以前なら「自転車は歩道なんじゃん?」が当たり前だった。
だが、ネガティブだ。これを言う人は、大抵の場合ドライバーとしての立場からだ。
私はテレビ局に勤めているので、特にテレビに“出る側”の人からこういう話を聞くことが多い。相当モノの分かった人までがこれを言う。彼ら(彼女ら)は、通常クルマの後ろの席に座っていることが多いから。車窓から見ていて邪魔だなとイライラするのだろう。ハイヤーのドライバーから「最近の自転車は困ったもんですねぇ」なんて話を聞くことも多いと思う。そもそも本人が自転車に乗らない。
日本で「自転車=歩道」がスタンダードになったワケ
もちろん、そういう立場からの「自転車=歩道」論は、100%間違いだ。歩道にはベビーカーもお年寄りも障碍者もいるのである。そこに危険を押しつけてはいけない。
だいいち「これからは自転車は車道になった」なんて認識からして、まったくの誤りで、自転車は明治にヨーロッパから輸入されてからというもの、ずーっと車道を走るものなのである。これは道路交通法の17条と18条に定められていて、一度たりともそのポリシー自体は変わったことがない。そこは欧米諸国と何ら変わらないのだ。
ところが、この日本でだけ、なぜか「自転車=歩道」がスタンダードになってしまっている。それはなぜかというならば、昭和45年(1970年)の道交法改正にルーツがある。この法改正がキッカケになって、自転車は「歩道通行可」の標識がある歩道を例外的に通行できるようになった。
高度成長のなか、日本のモータリゼーションは急激にすすみ、クルマ対自転車の事故が増えた。そこで「自転車はとりあえず歩道に上げてしまいましょう」ということになった。道路インフラが整うまでの、いわば“時限的”な法改正である。歩道上の自転車は、あくまで徐行だし、やむを得ない場合に限っての措置だった。
ところが、これが極限まで拡大解釈された。
「これからはクルマが社会の主流だ。やれ行け、それ行け」とばかり、自転車が車道から追い出されてしまうキッカケとなった。その結果が今だ。警察庁が「自転車は車道です」と強調するのは「これまでもそうだったけど、守られていないんで徹底させます」という意味なのである。
だいいち自転車を歩道に追いやっても、自転車の事故率なんて減らなかった。