年金制度は崩壊すると本気で信じている人へ
雑誌やネットでは「年金制度は崩壊する」「年金をあてにしてはいけない」といった記事を、しばしば見かけます。年金の問題は政争の具としてよく扱われてきました。国民の不安を煽りやすい話題でもあるため、批判の対象にもなりがちです。
少子高齢化が進むなか、こんな記事を目にすれば、「やはり危ないのでは?」と疑いたくなるでしょう。しかし、これはまったくのウソです。年金制度は崩壊しません。
もしも、年金制度が崩壊したらどうなるでしょう。約5割の家庭で、65歳以降の収入を100%年金に頼っています。年金制度が崩壊すれば、これらの家庭生活まで崩壊する恐れがあります。そうなると、生活保護者が一挙に増加します。
年金の財源は社会保険からですが、生活保護のお金は国が4分の3、自治体が4分の1を負担しています。したがって、税金の負担がもっと重くなります。年金制度をやめたら、逆に国の負担が増えてしまうのです。ですので、年金制度が崩壊することはありえません。
年金の財政状態は2.7兆円の赤字だが…
「そうはいっても、現役世代が高齢者を支えるしくみなんだよね。年金の財政は安泰なの? 破綻しないの?」
この点は気になると思います。年金の財政状態を見てみましょう。年金の給付額55.7兆円-保険料39.8兆円-国庫負担13.2兆円=マイナス2.7兆円
はい、2.7兆円の赤字です。この赤字分は、年金積立資産残高の166.5兆円から取り崩します。
「赤字だって⁉ マズイじゃないか!」
慌てるのは待ってください。安心材料をご説明しますから。年金の積立金は運用されています。運用を担っているのがGPIF(年金積立金運用管理独立行政法人)です。かつて、運用がうまくいっていないとニュースで流れたことがありました。そのため、安心できないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。マスコミは運用が悪いときだけ取り上げるのです。
実際は、だいたい2〜3%で運用できています。2001年の運用開始から2021年の第4四半期までの運用実績は、年率3.7%のプラス。累積で約100兆円の黒字です。毎年4.8兆円程度は増えていきますから、赤字は十分に補えます。したがって、積立金を取り崩す必要はないわけです。50年くらいは取り崩さなくていいという試算もあります。
この先、少子化と高齢化がさらに進み、保険料収入が減って、支払う保険料が多くなるといった変化はありうるでしょう。ですが、そうした状況にも対応できるよう、5年ごとに年金制度の見直しを行なっています。
ちなみに、少子高齢化は今後も続いていきますが、人口の多い団塊の世代が75歳を越えると高齢者の数が減ってきます。2045年あたりからは、65歳未満と65歳以上の人口比率はほぼ横ばいになり、安定すると考えられます。
年金制度は人口や経済状況などさまざまな観点から、100年くらい先まで持つように設計されています。ですから、年金の財政が10年〜20年で崩壊するとは考えにくいのです。