トヨタ自動車製品企画本部主査 田中義和(たなか・よしかず)
1961年生まれ。大学院で機械工学を修め、87年に入社。AT(オートマチックトランスミッション)、駆動系の開発を担当。2005年に製品企画へ異動。以来、「プリウスPHV」の開発責任者。


 

「深夜電力を利用すれば、30円で満充電でき26.4km走れる」「新型電池搭載で、車体を軽量化でき走りは向上した」「ケーブルの改良により、充電をしやすくした」。速射砲のように話しまくる。一を問えば、十は返ってくる。

トヨタ自動車が1月に発売する「プリウス プラグインハイブリッド(PHV)」は、日本人のライフスタイルを変えるかもしれない。家庭のコンセントから車に充電するプラグインという新しい習慣が本格化する、とも見られるから。その開発責任者を2005年から務める。以前は、ATなど駆動系のエンジニアだった。

PHVは、ハイブリッド車(HV)と電気自動車(EV)の両方の機能を持つ。買い物など短い距離ならEV走行し、電池が切れるとHV走行して長距離走行にも対応する。急速充電を必要とせず、プラグインハイブリッド燃費は実に61.0km/リットル(JC08モード)。PHV量産はトヨタが世界初だ(初年度6万台を生産)。

「前例がない開発の面白さを、若い技術者たちに伝えたつもり」。開発までの最大の難関は「新型リチウムイオン電池に関する部分」だった。

2年前に投入した実証車の電池と異なり、パナソニックグループの三洋電機が開発した三元系(正極がニッケル、マンガン、コバルト)を採用。三元系リチウムイオン電池の実用化も世界初。「56セルを直列で搭載し、軽量・コンパクト化を実現した」。

なお、トヨタが三洋製電池を採用したため、スズキは実証中の発電機付きEVの電池を三洋製から東芝製に切り替えた。先端の電池を巡る新たな動きだ。電力不足、原油高騰のなかで、省エネ性能が高く実用性に優れたプリウスPHVへの期待は大きい。

(永井 隆=撮影)