IT企業が覇権を握りつつある中国の金融業界

さまざまな説が飛び交っているが、注意すべきは、中国共産党は決して一枚岩ではないという点だ。時にヒュドラ(多くの頭を持つ龍)に例えられることもあるが、中国共産党と中国政府の内部にある、さまざまな部局がそれぞれの思惑で動き、政策に自分たちの意図を反映させようとしている。

一連のIT企業規制の嚆矢となったアント・グループの問題はわかりやすい。規制には大きく二つの流れがある。第一の文脈は伝統的金融機関の保護だ。かつては経済界の王様だった金融機関だが、現在ではIT企業との力関係は逆転している。

建物に掲示されたアリペイ(支付宝)のロゴマーク=2020年10月29日、中国・上海
写真=EPA/時事通信フォト
建物に掲示されたアリペイ(支付宝)のロゴマーク=2020年10月29日、中国・上海

アント・グループにとって稼ぎ頭となるサービスはホワベイ(月賦払い機能)、ジエベイ(消費者金融機能)だ。スマートフォン・アプリから簡単に利用できる便利なサービスである。

どちらの機能にしてもアント・グループ単体で与信を提供するのではなく、地方銀行など伝統的金融機関との協調融資という形式になっている。もっとも、融資の大半は伝統的金融機関の負担だ。リスクを負って金を貸し出すのは金融機関で、アント・グループが拠出する資金は少ないが、技術料名目でがっつりと手数料を取るという図式になっている。

対等な関係ではないが、ホワベイにせよジエベイにせよ、ユーザー数9億人を超える怪物アプリ「アリペイ」と莫大なユーザーデータを持つアント・グループだからこそできること。中小の金融機関は条件を飲まなければ、アリペイで稼ぐチャンスを逃してしまう。

この構図が問題視され、規制につながったというわけだ。

全裸の写真を担保に融資する闇金業者も

もう一つの流れが「学生の保護」だ。

「大学生向けインターネット消費者金融の監督管理業務におけるさらなる規範化に関する通知」

今年2月24日に中国銀行保険監督管理委員会、サイバースペース管理局、教育部、公安部、人民銀行(中央銀行)が共同で発表した通達だ。消費者金融の利用者に対する身分確認を強化し、大学生を主要ターゲットとした消費者金融サービスを提供しないように求める内容だ。

中国では2010年代半ばから「校園貸」と呼ばれる大学生向けの消費者金融や闇金が拡大し、社会問題化してきた。パソコンやスマートフォンを購入する際、月賦で購入できるサービスを高金利で提供するというものから、「裸照」(はだかの写真)を使って借金を取り立てる、真っ黒な闇金業者まで、さまざまな校園貸が存在した。

裸照を使った闇金とは、業者が金を借りたい女子学生に対し身分証(国民IDカード)を手にした全裸の写真と動画を送るように要求するというもの。返済ができなければ、その写真を親や親戚にばらまくという。2017年には借金を返せなくて自殺した女子大生も出ている。

2017年に校園貸が規制され、当局が認めた事業者以外は学生向けの消費者金融を提供できないようになったが、「学生と借金」の問題は解決していない。

「回租貸」と呼ばれるのは日本の車担保金融、電話担保金融と同じ手法で、スマートフォンなど自分の所有物を担保にしてお金を借りる。スマートフォンを担保にしても今までどおりに使い続けられるので、つい気楽に借りてしまうが、実際には違法な高金利(中国では原則として年24%、延滞違約金含め年36%が上限となる)のケースも少なくない。