倍率10倍の「別荘」 年200日滞在の魅力

週末に畑仕事をするだけでなく、もう少し田舎暮らしにも軸足を置きたい人に、最近ブームなのが「二地域居住」だ。都会と田舎の両方に住まいを持ち、2つの生活を楽しむというものである。

1年間の「浪人」を経てから入居した宇津木さん夫妻。「本部主催の野菜づくり講座があるので未経験でも大丈夫」(孝雄さん)。

筆者が住む栃木県でも、数年前から「二地域居住」を喧伝し、都会から団塊の世代を呼び込む施策を展開している。

ところが、都会と田舎の二重生活では経済的負担が大きい。もっとリーズナブルに田舎に拠点を持ちたい人たちに、人気なのが「クラインガルテン」である。

クラインガルテンはドイツ語で「小さな庭」という意味だが、日本では「宿泊施設付き市民農園」として使われている。全国で50カ所ほどあると言われるが、今回は関東で最初にできた茨城県の「笠間クラインガルテン」を訪れた。

JR笠間駅から県道42号を車で10分ほど南下すると、中山間地帯にバンガロー風の洒落たコテージ群が現れた。宿泊施設となる「ラウベ」で、50棟ある。一つのラウベは37平方メートルで、居室、ロフト、キッチン、バス、トイレが付いており、5~6人が泊まるには十分。それが一区画300平方メートルの敷地のなかに立っており、残りの土地が農園となる。

年間の利用料は40万円で、最長5年まで借りられる。逆に言えば、毎年出ていく人がいるのだが、50棟のラウベは満室だった。笠間クラインガルテンの運営にあたる上野雅美は「このところの入居希望の倍率は4~5倍。10倍くらいの年もあります」と語る。入居は抽選ではなく、面接をして決めるという。

「単なる別荘ではなく、農園を楽しみたいという人に入ってもらっています。畑をおざなりにして、ゴルフ場通いばかりしている方には出ていってもらうこともありました。それと、ここでのイベントに積極的に参加していただくなど、協調性のある方ですね」