次々に誕生した「銀行ペイ」のメリットがわからない
なお、Jコインペイと同じようなサービスである「銀行ペイ」が2016年に開発され、横浜銀行の「はまペイ」、福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行の「YOKA!ペイ」、沖縄銀行の「OKIペイ」などが参加した。そして、2019年5月からは、ゆうちょ銀行の「ゆうちょペイ」が始まった。
乱立としか言いようがない状態だ。利用者の立場からすると、どれを導入してよいのか、皆目見当がつかない。
手数料収入を当てにする方針は間違っている
マイナス金利で収益が悪化する銀行にとって、QRコード決済による手数料収入は、新たな収益源だ。そこで、銀行としては、何とかしてこの事業を成立させたい。しかし、加盟店開拓は容易なことではない。
店舗が集まらない基本的な理由は、手数料が高すぎることだ。2~3%の手数料というのは、現在のATM利用の手数料と同レベルだ。
日本の小売業の売上高営業利益率は3%程度である。さまざまな経費をかけてやっとこれだけの利益を出したのに、電子マネーの店舗手数料でそのすべてを巻き上げられてしまうのでは、店舗が使うはずはない。
Suicaなどの交通系電子マネーの店舗手数料も高いが、駅内店舗の場合には導入せざるを得ない事情があるのだろう。また、nanacoなどのコンビニエンスストア系の電子マネーは、ポイントと結びついている。
しかし、これら以外は無理だ。Jコインペイが伸び悩む基本的な理由は、この点にある。
MUFGのcoinも同じ問題に直面しているのではないかと考えられる。つまり、Jコインペイと同じようなレベルの手数料を設定しており、このため、店舗が集まらない。そこで、リクルートのサイトで始めるようにしたのではないか? こう考えれば、利用先をリクルートに限定した理由が分かる。
しかし、ブロックチェーンを用いるデジタル通貨であれば、コストはずっと低くできる。そのため、手数料をゼロに近くすることができる。手数料ゼロなら、加入店を開拓するために努力する必要はない。逆に言えば、メガバンクが手数料収入を当てにデジタル通貨サービスを始めようとするのは、間違いだ。
「日本人はキャッシュ志向が強いためにキャッシュレスが進展しない」と言われる。しかし、コロナ期においては、現金を介しての感染の危険があるため、日本でもキャッシュレス化への需要は高まった。
それにもかかわらず手数料が高いために、店舗が利用しようとしないのだ。日本でキャッシュレス化が進まない大きな原因は、ここにある。