周囲の心理がどう変わるのか

そのとき、達成すべき成果も明示する必要がある。生産部門ならば、生産量の増加やコストの削減、歩留まり率の向上など。販売部門ならば、売上高や契約件数、所要時間の短縮、活動頻度などがあるだろう。また、部門によっては、仕事手順の立案や簡素化、ムダの追放、接客態度の向上なども挙げられるかもしれない。

ものごとを決める場に参加させると、部下の心理にどんな変化が生まれるのだろうか。

まず、自分に何が期待されているのかを把握できたことによって、成果を高めようという気持ちがわく。そして、実現させるにはどんな工夫をしたらよいかを考え、思考が刺激される。結果として、さまざまな創意工夫や改善策が出てくると、生産性が高まる。

また、裁量の範囲が示されるので、上意下達の押しつけではないとわかると、組織に対する信頼感が醸成されるようになる。

その際に、気をつけなければならないことが3つある。

第一は、当人がその仕事についてあるレベル以上の知識をもっていることが前提となる。部下がその仕事に不慣れであったり知識が少ないのに、ものごとを決める場に参加させると、不安や心理的緊張を与えてしまい、自由な発想を奪ってしまうことがある。このような場合には、上司が主導して、当人の能力に応じた仕事や目標を割り当てるべきである。

第二に、ものごとを決める場に参加させることが、決して形だけであってはならない。部下を巻き込んでも、実際には上司の意向ばかりが一方的に反映されてしまい、当事者の判断や考えが尊重されなければ、不満や失望が高まり、かえって意欲を低下させる。お互いの理解と納得が得られるまで、辛抱強く話し合うことが大切である。