いかにして生産性をあげ、コストを下げていくか。タンザニアでは生産性が高く、高価な日本製や欧州製の機械は使わず、中国製の機械を使っている。コストを下げるという狙いばかりではなく、雇用を増やすという目的があるからだ。だから時として、「思ったように糸が引けないという事態も起こる」(石毛)。
従業員も工場で働いた経験などない人ばかりだ。そうした条件のもと、石毛たちは「とにかくやってみせて、結果を出して、納得してもらう。そうでないとついてきてもらえない」と、増産に向けて奮闘を続けている。
現在、オリセットの販売先は各国の政府が主体。ごく簡単に言えば、国際機関のファンドから支援資金が各国政府に下りてきて、入札でどの企業から購入するかが決まる。蚊帳は政府機関などから、最終消費者に届けられる。その点では、いまのオリセット・ビジネスはいわば卸なのだ。
「こうしたファンドをベースにしたビジネスが、永遠に続くわけではないので、我々としては川下の市場にまで入り込むことを計画している」(石毛)
いよいよ、アフリカにおいてBOP市場開拓という新しい次元への挑戦が、本格化しようとしている。
最後になるが、BOP市場取材で強く印象に残った言葉を記しておきたい。
「東京の言うことを聞くな。現地の1ルピアの重みは、現地が一番よくわかっている」(フマキラー・山下修作)
この教訓は、インドネシアに限らず、新興国市場の開拓に奮闘している人々すべてに通じるはずである。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時
(撮影=小原孝博)