事業者選定プロセスの不透明さが指摘される長崎県

近畿圏の2地域に比べ地元政財界や県民の歓迎ムードが強い長崎県だが、運営事業者の選定を巡り不透明な手続きが問題視されてきた。事業者選定では、1次審査でCAIJを大幅に上回る得点を取っていた2事業者が2次審査で落選したことで、2事業者が審査結果に疑義を申し立てている。しかも県から事前に「信用性」や「廉潔」の問題などを理由に辞退を迫られたというのである。

9月16日の県議会で、自民党の溝口芙美雄県議は「(落選した)業者から選定過程に問題があったという意見が出たようだが公平、公正に行われたのか」と説明を求めた。中村法道知事は「選定は外部の専門家による審査委員会を設置して公平、公正、透明性をもって行われ内容は公表されている。社会的信用性と廉潔性は県が独自に行い、その結果は審査委員会にも開示していない」と答弁。落選事業者が問題視している県の「独自調査」の判断基準はあくまで公表しない方針だ。カジノ・オーストリアが本国で政治家の汚職事件に関係があるとの報道もあり、県の選定過程の不透明さは今後も尾を引く可能性がある。

「ストップ・カジノ! 長崎県民ネットワーク」は6月末までに1万人超のIR誘致反対署名を中村知事に手渡したが、その後も署名運動を継続中だ。新木幸次事務局長は「横浜の撤退やIRの実態も市民にはよく知られていないようだ」ともどかしさを感じているが、11月末から始まる県議会に新しい署名を提出する準備を進めている。反対意見の盛り上がりに期待している。

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盤石の感がある大阪にもさざ波が…

衆院選では維新の会が議席を41に伸ばして第3党に躍進。盤石の感がある大阪も例外ではない。吉村洋文大阪府知事は8月の横浜市長選の翌日、「横浜が大阪のIRに影響を与えるものではない。どういうものができるかを丁寧に説明しながら進めていく」と報道陣に述べ、横浜市撤退の影響を否定して見せた。

しかし、「カジノに反対する大阪連絡会」などが11月中に横断的な反対活動に打って出る準備を進めている。同連絡会は2018年以降の署名運動で約10万人もの署名を府や市に提出した。有田洋明事務局長は「大阪にはいまカジノ反対を掲げるグループが8団体ある。衆院選が終わったのでこれから足並みをそろえて強力に運動を展開する」と意気込む。無風に見えた大阪にもさざ波が立ち始めた。