後継者の問題も深刻です。一族の中から後継者を見つけるのは、これまでも決してたやすいことではありませんでした。しかし、人の寿命がますます伸びている今日、多くのオーナー経営者がこれまでより何年も長く権力の座に留まるようになっています。同時に、多くの家長が、能力に関係なく子孫に会社を継がせるという古くさい慣習にしがみついています。こういった状況では、今のような変化の激しい時代にとてもついていけません。

2つ目は、途上国の人材不足です。特に、技術者や科学者ではなく専門職マネジャーの不足が続くと予測されます。たとえば、私たちが講演旅行でドバイを訪れたとき、地元企業や欧米企業数社のCEOがこう言っていました。

「人事から財務までの各部門の運営を任せられる人材を採用できないことが、わが社の前進を妨げている」

最後に、いつの時代にもビジネスにはつきものですが、生産性を大きく低下させる問題を挙げたいと思います。それは「腐敗」です。ここで言う腐敗とは、大規模な企業汚職のことではなく、多くの途上国で広く見られる、いわゆる「見返り文化」のことです。

このような慣習は、賃金がきわめて低いがゆえに、人々が他の収入源を求める国で広まります。ですから、インドのニューデリー空港で手荷物検査をパスするためには、検査官に袖の下を渡さなければならず、ブラジルのサンパウロでタクシーの営業許可を取るためには、地元の規制担当者に「感謝の気持ち」を表さなければならないわけです。結局、はんこを押す権限を持つすべての役人が一種の「起業家」になるわけです。しかし、そのような「陰の経済」の存在は、表の経済から資金とエネルギーと希望を抜き取り、活力を失わせます。

悲観的になる必要はありませんよ。どの問題も非常に心配なことではありますが、歴史的に見ても、ビジネスというものは一見乗り越えられそうもない挑戦に打ち勝ってきたのですから、未来もやはりそうなるでしょう。

(翻訳=ディプロマット 写真=Getty Images)