メンタル不調をAIで可視化
メンタルヘルス分野では、自分の不安定な気持ちを安定させたいという「情緒安定ニーズ」も生まれました。実際、そうした商品の人気も高まっています。いちばんはやっているのは、昨年12月にリリースされた日記アプリ「muute(ミュート)」です。
自分が感じていることをありのままに書き出すことで「書く瞑想=ジャーナリング」が行えるもので、書いた内容からAIが分析したフィードバックがもらえることから、自分の心の現状や変化を可視化できると人気です。
またSNSでは、「#IAMWHOLE」というハッシュタグが世界的に話題を集めました。これは、誰もが自身のメンタルヘルスについてオープンに話せる社会づくりを目的とするプロジェクト。自分の手にWHOLE(○マーク)を書いた写真にこのハッシュタグをつけて投稿するもので、日本では若者に人気のインフルエンサーたちも参加していました。
心の不安定を解決したいニーズが高まっている
Z世代の間では、心の不安定さを解決したいというニーズがこれまで以上に高まっているように思います。そもそも今は、先が見えにくい不安定な時代と言われています。Z世代はそうした時代に生きている子たちであり、他の世代に比べて人数が少ないことから、競争もあまり経験しないまま育ってきました。
親や先生から厳しいしつけや指導を受けた経験も、僕たちの世代に比べれば減っています。子育てや教育などにおいて「優しさ」を最優先とする、それ自体はもちろんいいことなのですが、そうした柔らかい時代に育ったためか、Z世代には心がもろい子も少なくありません。
こうした、メンタルヘルス分野のニーズが表に現れたのは、もともと「もろさ」を持っていたところへコロナ禍が起きたからではないでしょうか。従来Z世代の間にあった、心の不安定さを解決したいという隠れたニーズを、コロナ禍が可視化したのではと思います。
欧米では、心が不安定になったときにカウンセリングを利用する人が少なくないと聞きます。日本にも、カウンセリングを受けることが特別ではない時代が来るのかもしれません。
内省欲求、メンヘラ共感、情緒安定──。Z世代の間でこうしたニーズが高まっていることを、僕たち大人は見逃してはいけないと思います。商品・サービス開発の担当者だけでなく、この世代の子を持つ親世代の方にも、新人を育てる立場にある上司世代の方にも、ぜひ知っておいていただけたらと思います。