子育ては「ジョイントベンチャーの新規事業」

「子育て」も、多くを学べるベクトル合わせの機会です。

子育てが始まると、多くの夫婦は意見の対立から揉めることが多くなりますが、それはなぜでしょうか? その理由は、子どもができたことで、夫婦のモードが変わるからです。それまで恋人の延長のような関係性だったのが、子育てという新たな「重要任務」が夫婦の共同プロジェクトとして発生したことで、がらりと関係性が変化するのです。

握手をしている人
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仕事に喩えれば、まったくカルチャーの異なる2つの会社が、ジョイントベンチャーを創り、初顔合わせの社員同士で新規事業を成功に導くのに似ています。こうした起業の場合は事前にあらゆるリスクを想定して臨みますが、子育ての場合は、事の難しさを事前に意識して臨む夫婦は少ないのが実情です。

赤ちゃんは、親にとって無条件に可愛い存在。誕生を知らされた祖父母や親戚、友人知人の多くは心から祝福してくれ、生まれてからしばらくは親も我が子の世話に必死です。だから、子育てという事業がいかに困難か、最初のうちはなかなか気づきません。

異なる家庭で育った男女が「父」と「母」になる

しかし実際には「夫婦」であっても、20年以上、ときには30〜40年も異なる環境・文化の中で暮らしてきた「他人」同士。

子育てにおいても、お互いが育ってきた家庭から強い影響を受けるのは当然です。しつけに厳しかったか、甘かったか。放任主義であったか、過保護だったか。贅沢に育ったか、節度を重んじる方針であったか。幼少期のお小遣いはいくらだったか。すべて違います。

また、父親がサラリーマンで母親が専業主婦の家庭と、両親が一つの店を経営しているような自営業者の家庭でも、日常生活の様子はまったく異なるでしょう。

そうした異なる家庭で育った男女が、ある日、いきなり「父」と「母」になる。

それが、子どもが生まれるということなんです。学校でも親になるための「教育」は行われていません。そんな2人が、いきなり子育てという「戦場」に放り出されます。入試や学校の試験と違って、子育てには「正解」は存在しませんし、若い夫婦に「これが正しい子育てだよ」とアドバイスをくれる人もそうそういないでしょう。

ましてや、赤ん坊は生き物です。生まれた瞬間から無限に「正解のない問いかけ」をしてきます。おむつは汚れていないし、ミルクはさっきあげたのに、いきなり火が点いたように泣き出し、いつまで経っても泣きやまない……そんなとき、会社で優秀なビジネスパーソンである人ほど、途方に暮れてしまうと思います。