「ソウル地裁判決」は政治決断を下すチャンスだった
文在寅大統領には政治決断のチャンスがあった。
たとえば、大法院判決と正反対の判断を下して注目された今年6月7日のソウル中央地裁の判決である。日本の企業に賠償を求めた元徴用工らに対し、同地裁はその訴えを却下した。却下の根拠は1965年の日韓請求権・経済協力協定だった。「訴訟を起こす権利の行使は制限される」と判断し、訴えを退けた。
国際法上、真っ当な判決だった。日本政府の主張にも近い。
このソウル地裁判決が出た時点で、文在寅氏は日韓請求権・経済協力協定を尊重する決断をすべきだった。そうすれば徴用工問題は解決していたはずだ。
今年1月18日の新年記者会見の際、文在寅氏は徴用工問題について「日本企業の資産が現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくない」と現金化を避けたいとの意向を初めて示し、日本政府も注目していた。現金化を回避したいとの意向があるのだから、ソウル中央地裁の判決をテコに徴用工問題を解決できたはずである。
次期大統領候補は「必ずや日本を追い越す」と言明
韓国の大統領の任期は1期5年と決められ、再選はできない。文在寅氏も来年5月で大統領職を辞することになる。今年10月10日、与党の「共に民主党」(革新)は、文在寅氏の後任を選ぶ来年3月の大統領選に向け、京畿道知事の李在明(イ・ジェミョン)氏(56)を公認候補に選出した。
報道によると、李在明氏は10日に全国11カ所で行われた予備選で、得票率50.29%の過半数を獲得し、決選投票なしで大統領候補となった。弁護士出身で、城南市長を経て2018年に京畿道知事に就任した。新型コロナの感染対策で支援金支給と検査実施を掲げて人気を集めた。
選出後、李在明氏はこう力説していた。
「必ずや日本を追い越す。そして先進国に追いつき、世界をリードする韓国を作り上げる」
猛烈な反日感情の持ち主なのである。文在寅氏以上かもしれない。仮に大統領に就任した場合、確定した徴用工訴訟の大法院判決を使って日本政府を攻撃してくるに違いない。現時点で文在寅氏が徴用工問題を解決したとしても、蒸し返して日本側に損害賠償を求めてくるだろう。
11月には保守系最大野党の大統領候補も決まる。大統領選ではこの保守系候補と革新系候補の李在明氏との一騎打ちになる可能性が高い。徴用工問題など歴史問題の解決は、親日の保守系候補に期待したい。