子どもが事情や理由を打ち明けるきっかけに
そうして気持ちの一部でもつかめれば、それを糸口にしてあらたなコミュニケーションができる。オンラインゲームをやめられず「マジ焦る」という子どもには、「なるほど、焦りとか不安があるんだね。そういう気持ちを正直に話してもらえてうれしいな」と、今度は私の気持ちを返してみる。
「うれしいな」と言われた子どもは目を丸くして、「ええー? うれしいとか言われたの、はじめてだよ」と驚くが、その顔にはいかにもホッとしたような表情が広がっていく。その上で、「焦ったり、不安になったりするってことは、ゲームもそこまで楽しくないのかな?」とか、「もし楽しめなくなっているのなら、そこのところをもう少し詳しく聞かせてもらえる?」とか、次のコミュニケーションにつなげていく。
そうしてある子はすらすらと、別の子は慎重に、また別の子はじっくりと考えながら、それぞれの子どもなりに事情や理由を打ち明けてくれるのだ。
「スマホ弱者」の親たちが抱える悩み
私と子どもたちとの関係性に限らず、親子の間でも同じことができるだろう。数学のテストが70点ならば、その結果をいい悪いと評価するだけでなく、70点を取ってうれしいのか、くやしいのか、ホッとしたのか、子どもの気持ちを尋ねてみてはどうだろう。
仮に子どもが「結構勉強したんだけど、70点だったからくやしいな」と話したら、「なるほど、それはくやしいかもね」と受け止める。次に「でも、結構勉強したってことは、お母さんはうれしいよ」と親の気持ちを伝えてみる。こうすることで70点という事象の裏側に、くやしいという子どもの気持ち、それでもうれしいという親の気持ちがあるのだと互いにわかりあえる。
特に子どものネットやスマホ利用の問題を解決するには「気持ちの交流」が効果的だ。なにしろ親のほうはTikTokだのボイスSNSだのと言われても、その実態をほとんど知らない。わからないから話ができないと思いがちだし、実際に話が通じなかったり、つい親子で口論になったりする。
そんなとき、親はどんな気持ちになるだろうか。子どものやっていることがわからなくて怖い、話ができなくて不安、すぐにケンカになって悲しい、おそらくそうした気持ちを持つはずだ。