「衝突軽減ブレーキの義務化」が段階的に進む
トラックにおける衝突被害軽減ブレーキの義務化は、今から約7年前の2014年11月からGVWごと段階的に施行されている。車両総重量であるGVWとは、車両重量+積載する積荷+乗員の重さを足した値でt(トン)で示される。
日本では、このGVWが大きい(=重い)大型トラックから順次義務化が施行され、2019年11月からは小型トラック(GVW3.5t~8t以下)にまで法律が適応された。よって現在、日本で販売されているトラック(GVW3.5t~22t超)の新型車すべてには、衝突被害軽減ブレーキが標準で装備されている。なお、法律が施行された時点ですでに販売されている継続生産車には、装着義務に対する2年間の猶予が設けられた。
乗用車における衝突被害軽減ブレーキも普及が進む。2020年に国内で販売された新車(乗用車)のうち、なんらかの衝突被害軽減ブレーキを装着した車両は90%を超えることが明確になった。
普及率の増加は事故の被害を軽減する有用性が認められたからで、たとえばスバルの衝突被害軽減ブレーキを含む先進安全技術「アイサイト」装着車では、追突事故発生率が84%減少、歩行者事故発生率は49%減少している。これらを裏付けにした社会的損失度の低下から、2020年/2021年と2年連続して自賠責保険料が引き下げられた。
そして2021年11月以降に販売される新型の乗用車に、衝突被害軽減ブレーキの義務化が施行され、トラックと同じく継続生産車には2025年12月(11月末日)までの猶予が設けられている。
乗用車の衝突被害軽減ブレーキもトラックと同じく前述した2つの段階から構成されるが、乗用車の世界では、第二段階の「システムによるブレーキ制御」のイメージがCMなどの影響を受け先行したことから、「自動ブレーキ」などといった過大評価がなされ、いつでもどこでも完全停止するといった誤解も生まれた。
大型トラックによる死亡事故の25%は「左折時の巻き込み事故」
ところで、乗用車の世界で実用化された先進安全技術のうち、たとえば高速道路などで前走車を追従する「アダプティブクルーズコントロール/ACC」機能や、車線の中央を維持する「レーンキープ/LK」機能は、すでに多くの大型トラックに実装済みである。
しかしながらGVWのかさむ大型トラックが加害車両となる交通事故では、運動エネルギーの大きさから被害が大きくなる傾向があり、そこをいかに先進安全技術で抑えるか、これが昨今の課題といわれる。
また、長時間労働となる物流業はドライバーの身体的負担も大きいため、先の先進安全技術によってその負担を減らし危険な状態に近づかない運転環境の構築が求められている。
そうしたなか今回は、三菱ふそうの大型トラックのステアリングを握り、機能強化された2つの新技術を体感した。
新技術の一つ目「アクティブ・サイド・ガードアシスト1.0」は、自車トラックの左側を歩く人や、車道を走る自転車にもかかわらず、①左ウインカーを出して左にステアリングを操舵した際、②警報ブザーと警報ランプで巻き込み事故の危険性を報知し、③それでもドライバーが反応しない場合には自動的にブレーキ制御を行う機能だ。
上記のうち①と②はすでにスーパーグレートに実装済みであったが、今回③の自動的なブレーキ制御が機能強化として加わった。三菱ふそうの技術者によると、「大型トラックが加害車両となる死亡事故のうち25%が左折時の巻き込み事故であることから、今回の機能強化に至った」という。