「引用栄誉賞」に中国人材は少ない

指標の代表格が、米情報調査会社クラリベイト・アナリティクスの「引用栄誉賞」だ。同社は9月22日に、論文の引用数をもとにノーベル賞が有力視される2021年の「引用栄誉賞」16人を発表した。日本からは3人が選ばれたが、中国は入らなかった。過去に中国系研究者が2人選ばれたことがあるが、中国本土出身者ではない。同社によると「引用栄誉賞」受賞者59人が実際にノーベル賞を受賞している。

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真鍋さんも2015年に米国のノーベル賞と呼ばれる「ベンジャミン・フランクリン・メダル」、18年にスウェーデン王立科学アカデミーの「クラフォード賞」など、国際的権威のある賞を受賞している。

他にも、米国の医学賞「ラスカー賞」、カナダの医学賞「ガードナー国際賞」、国際科学技術財団の「日本国際賞」、稲盛財団の「京都賞」など数々の指標となる賞がある。今年の京都賞では、中国のコンピューター科学者で、清華大・学際情報学研究院長の姚期智(アンドリュー・チーチー・ヤオ)氏が受賞したが、まだ中国の存在感は薄い。

では、研究者を輩出する大学の実力はどうか。8月に、ノーベル賞候補と目される藤嶋昭・東大特別栄誉教授が研究チームごと上海理工大学に移籍したことが注目を集めたが、今、中国の大学は勢いを増している。

東大を大きく上回る「世界16位」にランクイン

英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」は、教育、研究、論文の引用数、国際性、産業収入の5項目について、大学の点数を計算し、世界の大学ランキングを発表している。

9月2日に発表された「世界大学ランキング2022」によると、中国からは、北京大学と清華大学が16位に入った。100位以内を見ると、復旦大学(60位)、浙江大学(75位)、上海交通大学(84位)、中国科学技術大学(88位)、と続く。

北京大は2015年には48位だったが毎年順位を上げ、昨年は23位。清華大も2012年の71位からほぼ毎年順位を上げ、昨年は20位になった。両大学ともそれをさらに押し上げ、今年は10位台にくいこんだ。一方、日本で100位以内に入ったのは、35位の東大と61位の京大の2校だけ。中国の大学の元気さが分かる。

文部科学省文部科学審議官などを歴任し、20年以上にわたって中国の科学技術を調査分析している林幸秀・ライフサイエンス振興財団理事長は「2003年に北京、西安、上海の大学を視察したが、使っている装置は10年以上前の古いもので、遅れが目立った。しかし経済発展に伴って、2010年頃から研究に投じる国の予算が倍々ゲームで増え、装置も施設も新しくなり、研究者も増えた。今や中国の大学の金、人、装置は各段に違う」と話す。