エコっぽいものに飛びつかない

環境問題の未来を語るうえで、僕がよく使う言葉があります。それは「エコっぽい」です。

日本人をはじめ先進国の人たちの多くが、「それは本当にエコか」を科学的に検証することなく、「エコっぽいもの」に飛びついています。その結果、かえって環境によくないという皮肉な現象が次々起きているのです。

世の中には、一見、環境によさそうだけれど、少し考えれば意味のないことはたくさんあります。僕らは、企業や組織が自分たちの商品やサービスを売り込むための「環境にいい」というセールストークにまんまと引っかかっているのです。

たとえば、電気自動車。二酸化炭素を含んでいる排気ガスを出さず、環境に優しいということで、生産台数を増やしています。

けれど、エネルギー源である電気を発電しなければならないことまで考えるとどうでしょう。日本や中国、アメリカでは、火力発電への依存度が高く、日本原子力文化財団が公表した2019年のデータだと、日本は89%、中国は87%、アメリカは84%となっています。

つまり、電気自動車から直接排気ガスが出ないとしても、その電気を発電する際に、二酸化炭素がたくさん排出されてしまっているのです。

こうしたことを考えると、「電気自動車はエコだ」とは簡単に言い切れなくなります。しかし、多くの人は「排気ガスが出ないのだから環境にいい」と盲目的に信じ込み、一見エコっぽい電気自動車をもてはやしています。

これからさらに、環境へ配慮しようという動きは加速していくでしょう。それ自体はいい傾向だと思いますが、「エコっぽいもの」に短絡的に飛びつく姿勢をなんとかしないと、せっかくの効果は限定的になってしまいます。

SDGsのイメージ
写真=iStock.com/Yuuki Mizoguchi
※写真はイメージです

SDGsは絶対に実現できない

消費者の声や世論に敏感な企業ほど、熱心に取り組んでいるのがSDGsです。SDGsには「17の大きな目標」が掲げられています。

「貧困をなくそう」や「飢餓をゼロに」といった発展途上国への支援が必要なものや「気候変動に具体的な対策を」や「陸の豊かさも守ろう」といったすべての国で取り組むべきことまで、多岐にわたります。

SDGsはまさに最新のトレンドではあるものの、僕は一時的な流行に終わるのではないかと思います。

なぜなら、世界が一丸となることはまず無理だからです。人類史上、世界全体で協力体制を敷けたことはありません。

たとえば、目標の一つ、「陸の豊かさも守ろう」について考えてみましょう。先進国を中心とした余裕のある国が、いくら環境への配慮を訴えたところで、発展途上国が森林の伐採をやめるはずがありません。

発展途上国の人たちにとって、森林を伐採し、農地を広げていくことは生きるために必要不可欠なことだからです。生きるのもやっとの人たちに環境保全を求めるのは、先進国のエゴを押しつけているだけではないでしょうか。