世界経済に影響を与える2つのパターン

エバーグランデの問題が世界経済に与える影響を考えるとき、まず同社の米ドル建て社債の返済について見ておく必要がある。米ドル建て社債の発行残高は195億ドル(約2兆円)だ。その影響の波及経路は、直接的、間接的に分けられる。

直接的な影響は、米ドル建て社債がデフォルトし、それを保有する投資家が損失を被るパターンだ。この場合、楽観はできないが、主要国の金融機関のリスク管理体制等を考えると損失をそれなりに吸収することは可能だろう。

一方、デフォルトの間接的な経路を通じた影響は、世界経済にかなりの負の影響を与えるはずだ。デフォルトが発生すれば、エバーグランデの取引先や他の不動産業者の業況や、中国経済を支えてきた不動産市況が悪化して景気の減速が加速化するだろう。世界第2位の規模を誇る中国経済の一段の減速は、主要国の輸出の減少などの経路を通って世界経済全体にマイナスになることは間違いない。

8月まで好調だった韓国経済は減速する恐れ

中国経済の減速に大きく影響される国の一つが韓国だ。

韓国経済の成長の源泉に位置付けられる輸出に関して、対中輸出(香港含む)は全体の約32%を占める。基本的に、中国の消費、生産、投資が増加基調で推移する場合、韓国では中国向けを中心に輸出が伸び、景気は回復する。その逆もまた真なりだ。8月まで、韓国の輸出は地域別には中国や米国向けが伸び、品目別には半導体や石油化学製品などが増加した。それが韓国の景気回復を支え8月には利上げも実施された。

ただ、今後、中国経済の減速スピードによって、輸出を中心に韓国の経済にはマイナスの影響が波及し、回復ペースが追加的に鈍化する恐れがある。8月のように中国の消費などの減少基調が強まれば、対中輸出の増加ペースは弱まるだろう。感染の再拡大によって中国から韓国への旅行需要の回復に時間がかかることも経済成長にマイナスだ。

また、足許の中国では石炭不足を背景に電力の不足が深刻化している。電力不足によって中国では生産活動が停止、あるいは制限され始めている。中国での生産活動がさらに鈍化すれば、韓国が中国に輸出してきた石油化学製品や機械などへの需要は落ち込むだろう。