公開された複数の文書からはは、研究者たちがコロナウイルスの遺伝子を操作して変種をつくり、それを複数の洞窟に放ってコウモリが感染する様子を観察して、それらのウイルスが人間にもたらすリスクを評価しようと計画していたことが明らかになった。

DRASTICは9月21日にウェブサイトに行った投稿の中で、公開した複数の文書は、匿名の内部告発者から提供されたものだと説明。文書には、エコヘルス・アライアンスが武漢ウイルス研究所と「協力」して、「ヒトに感染するコウモリコロナウイルスの危険な先端研究を行おうと」計画し、DARPAに研究資金の助成を要請したことが記されていたという。

DARPAは米国防総省傘下の研究機関であり、そのPREEMPT(病原性脅威発生の予防)プログラムを通じて「感染症の脅威から軍を守る」ことが使命の一つだ。

DRASTICは、エコヘルス・アライアンスがDARPAに研究費支援を要請する文書の中で、「武漢ウイルス研究所が集めた、致死性の高いコウモリコロナウイルスのキメラウイルスを、実験用マウスに注射する研究を提案」していたと指摘した。

3年半かかる研究の費用支援をDARPAに要請

またDRASTICが公開した、エコヘルス・アライアンスの計画には、プロジェクトの目的は「コウモリ由来でヒトにも動物にもリスクを及ぼす、SARS(重症急性呼吸器症候群)に関連のある新型のコロナウイルスが、アジアに広まる潜在的可能性を排除する」ことだと記されていた。研究計画概要には、研究者たちはコロナウイルスが「広まるリスクが高いと認められた」複数の場所で「集中的にコウモリの検体を採取」すると書かれていた。

エコヘルス・アライアンスはまた、デューク・シンガポール国立大学医学部、米ノースカロライナ大学、パロアルト研究所(カリフォルニア)、米地質調査所・国立野生動物保護センターおよび中国・武漢ウイルス研究所の研究者たちと協力して、研究を進める計画だと文書に明記。研究には3年半かかると推定しており、DARPAに研究費1400万ドルの助成を要請していた。

この研究計画の提案は2018年3月に行われている。新型コロナウイルスが世界中に広まる2年足らず前のことだ。新型コロナウイルスは、武漢で最初にヒトへの感染が報告され、感染流行が起きている。

DRASTICの調査のお陰で、今では武漢ウイルス研究所が長年、コウモリが生息する複数の洞窟で調査を行い、さまざまな種類のコロナウイルスを収集していたことが明らかになっている。しかもそれらのウイルスの多く(新型コロナウイルスに最もよく似たものも含む)は、2012年に3人の鉱山作業員がSARSに似た感染症とみられる症状で死亡した洞窟から採取したものだった。