全SNSを退会し、ネットの利用時間も減らした

こうした変化の一端を担えたかはわからないが、ともかく当時の私は、若者世代を中心に「生き方」と「働き方」の意識をアップデートし、SNSでの発信を推奨する「SNSの伝道師」だったのだ。けれども、その後の数年間で、私の気持ちや考え方に大きな変化が起きた。2017年にネットから距離を置くようになり、翌年、すべてのSNSを退会。スマホには極力触れないようにして、ネットの利用時間も制限した。

理由は3つある。

1:自由な時間が減った

1日平均5、6時間、パソコンやスマホからネットにつながっていた。ネットに触れていない時間も自分の投稿に“対する”反響や反応が気になり、仕事とプライベート両面で“今”に集中しにくくなってしまう。発信することも仕事だという意識もあって、危機感を持たないまま、SNSは生活そのものになった。

2:のびのびと発信ができなくなった

フォロワー数が増え、認知度が高まるにつれて、以前のような気ままな発信ができなくなった。発信には気を遣っているつもりでも、下手をすれば誰かに指さされ、最悪の場合炎上する。

大好きだったはずのSNSが、だんだん億劫になり、一体、何のためのSNSなのだろうと感じるようになった。

3:“つくられた世界”への違和感

これには自分の発言だけでなく、誰かの発言も含まれる。当たり障りのない言葉や、小さな噓、自分を取り繕うような態度……。

そうした“大人としての振る舞い”に対しても、うんざりした。

ネット上で“本当の関係”を築くのは難しいと感じたし、ここに莫大なエネルギーを注ぐ意味が見出せなくなってしまった。

チャンスやつながりを失うのが怖かった

とはいえ、すぐにSNSやネットの世界から離れられたわけではない。

SNSをやめるときに最も怖れていたのは、チャンスやつながりを失うことだった。

実際のところ、やめてすぐは、私の世界は限定的だった。つながりが、リアルな友人や仕事相手に限られるのだから当然だが、裏を返せば、SNSをやめれば切れる人間関係がそれだけ多いということ。

「本当のつながりとは何だろう」と、考えさせられた。