アフガンの泥沼化はオバマ大統領のせい

アフガニスタンは、基本的に“統治不能の国”と考えていい。最大の理由は、人種の多さだ。人口は3800万ほどで、そのうちパシュトゥーン人が4割、タジク人が3割、ハザラ人とウズベク人が各1割、それ以外に10近い人種がいる。ほとんどがイスラム教徒だが、8〜9割ほどのスンニ派と、ハザラ人に多いシーア派がいる。この人種の多さから統治が困難なところは、ミャンマーに似ている。

民主的な選挙では、人口が多いパシュトゥーン人から大統領が選ばれる。皮肉なことに、タリバンも大半がスンニ派のパシュトゥーン人だ。アフガニスタン・イスラム共和国の初代大統領となったハーミド・カルザイも、今回逃げ出したガニもそうだ。彼らは英語がうまくてアメリカにとって都合はよくても、統治能力がなかったと言っていい。

ただし、ブッシュは、アフガンにここまで深く関わるつもりはなかった。彼はサダム・フセインがいるイラクへの侵攻に力を注ぎ、アフガンについては国連に任せていた。

アメリカがアフガンの泥沼にはまっていったのは、オバマ大統領が「本当の敵はイラクではなく、アフガニスタンだ」と言い出したのが発端だ。オバマは歴史に残る大統領だと高く評価する人もいるが、オバマの誤った判断からアメリカ(およびNATO)が多大な犠牲を払ったことは忘れてはならない。

トランプ大統領は、アフガニスタン情勢についてはオバマの方針を継続しながらも、“アメリカ・ファースト”の発想で米軍撤退の方向性を打ち出した。トランプは、他国のためにカネを使いたくない。彼の頭にある中東の国はイスラエルくらいで、イスラエルは基本的にアフガンには無関心だ。

結局、貧乏くじを引いたのはバイデンだ。トランプが打ち出した方針を実行に移して大混乱を招いた結果、アメリカ国内で逆風となったのだ。

そして、これから注目すべきは中国の動きだろう。

2021年7月に中国の王毅外相は、タリバンの最高幹部と天津で会談している。中国の「一帯一路」構想のなかで、アフガンは重要な位置にある。資金援助して工場を建設し、自分たちとの経済活動を盛んにさせることは間違いない。また、道路整備を進めて、パキスタンの港町グワダルまでのルートを開発する。中国はパキスタンだけでなく、アフガン経由でもペルシャ湾までのルートを手にすることになる。

これはイランへの抑止力にもなる。中国とイランの関係はいまのところ良好だが、今後のことはわからない。アフガンを中国の影響下に置けば、それが盤石になる。“永久皇帝”となった習近平が、モンゴル帝国のチンギス・ハーン並みに世界制覇を夢見ているとすれば、アフガンは重要な足がかりになる。