情報を読み解くリテラシー、日本と韓国の実力は?
行政のデジタル化の遅れを挽回することを目指し、政府は9月1日にデジタル庁を発足させた。ところが翌々日3日には、事務方トップにあたる「デジタル監」に就任した石倉洋子一橋大名誉教授による有料画像の不正利用が発覚。遅れているのはデジタルネットワークのインフラというより、デジタルリテラシーそのものであることを露呈した。
さらに同日、菅義偉総理大臣が内閣支持率の低迷の中で総裁選不出馬、すなわち事実上の退陣を表明。携帯電話料金の値下げやデジタル庁発足を推進してきたものの、自らのコロナ対策やデジタル対応の方針で次期政権を担うという責任や意欲を放棄した格好となった。
デジタル時代対応について、菅政権は目前の狭い視野の対策に終始し、国民能力の刷新にまで及ぶ根本的なデジタル社会対応にまでは考えが至っていなかったという評価が今後下されるのではなかろうか。
国民のリテラシー(読解力)は歴史的に以下の3段階を経て発展していくと考えられる。
①文字の読み書き能力(いわゆる文盲率の低減)
②言語内容の理解力(多言語対応を含めたコミュニケーション能力)
③デジタル時代の情報見極め能力(情報過多、誤情報、偽情報への対応能力)
今年になって、OECD(経済協力開発機構)は「21世紀の読者像」(21st-Century Readers)という報告書を発表し、第3段階のリテラシーについて詳しく現状と課題を整理している。今回は、この報告書で引用されているデータを使って、デジタルリテラシーへ向けた日本の状況を見てみよう。
日本は世界43カ国の中でもっとも「疑り深い気質」
近年、なりすましメールで個人情報を聞き出し、財産の詐取や悪意ある情報拡散につなげようとするネット上の犯罪行為が横行するようになった。これは、デジタルリテラシーにかかわる象徴的な事案ともなっているので、まず、こうしたデジタル犯罪への対処に関して各国民が、どの程度、用意ができているかについてのデータを紹介しよう。
有名な携帯電話会社から「スマートフォンが当たりました。リンクをクリックしてフォームにあなたの情報を記入すればスマートフォンを送ります」というメールが届いた時、「なるべく早くリンクをクリックしてフォームに書き入れる」のは適切か、それとも不適切かという問を各国の高校1年生に聞く調査が、OECDの2018年の学力調査(PISA調査)の中で行われた。
スマホをタダでもらえるチャンスかもしれないので、日本ならdocomoなどの名の知られた携帯電話会社からのメールということもあり、他人に先取りされないようなるべく早く応募した方が良いと考える高校生がいてもおかしくない。
しかし、こうしたメールを受け取ったら、有名携帯電話会社になりすまして個人情報を詐取する手口だろうと疑うのが当然であろう。すなわちすぐ情報を返信するのは「不適切」と回答するのが正しい。図表1には、各国の回答結果を「不適切」の多い順に示した。
日本の高校生は75.6%と世界43カ国の中で、もっとも「不適切」とする回答が多く、疑り深い気質を示している。
子は親の鏡ともいわれる。これが高校生の結果だが、国民全体の気風の反映という側面が大きかろう。日本に次いで、中国、英国、フィンランドなどが続いており、こうした国では、なりすましメールへのガードが堅いといえよう。