結婚したくても物理的にできない340万人の男性たち
「金持ちを貧乏人にしたからといって、貧乏人が金持ちになるわけではない」
1980年代に新自由主義によってイギリス経済を立て直したといわれるサッチャー首相の言葉です。この言葉はその通りだと思いますが、同時に聖書にあるような「富める者はますます富み、貧しき者は持っているものさえ奪われる」状況に追い込まれることも事実です。
恋愛や結婚においても新自由主義化が進んでいます。いわゆる結婚できる者とできない者との格差問題です。もちろん、全員が結婚を希望しているわけではないし、する必要性を感じない人もいることは前提として、結婚を希望したからといってその全員ができるわけではない問題があります。特に男性側に。年収や性格の問題ではありません。あくまで物理的に無理なのです。それも340万人も。
乳児が無事に育ち、男性人口がどんどん増えている
以前、〈人口の半分4600万人が独身に…20年後「超独身大国」日本の恐るべき実像〉という記事でご紹介した未婚男女の人口差に明らかなように、340万人の未婚男性は頑張っても相手がいないという「男余り」現象があります。
この大きな要因は、出生時の男女比にあります。女児より男児の方が5%ずつ多く生まれます。これは日本に限らず世界的にそうです。しかし、昔は乳児死亡率も高く、主に男児が亡くなる率が高かったため、結果的に、成人男女比は同じような数値に収束したわけです。現代は医療も発達し、1947年には8%弱もあった日本の乳児死亡率は、2019年では0.2%にまで激減しています。
つまり、生まれた子どもはほぼそのまま無事に大きくなるわけですから、毎年5%ずつ多く生まれる男性の人口が何十年と積み重なっていけば、当然こうした「男余り」(※)を招くことになるのです。
※「男余り」とは未婚人口の話であり、総人口の話ではありません。