東京五輪のスポンサーである点への自己批判はなし
朝日社説は五輪そのものに対する疑念も指摘している。
「延期に伴う支出増を抑えるため式典の見直しなどが模索されたが実を結ばず、酷暑の季節を避ける案も早々に退けられた。背景に、放映権料でIOCを支える米テレビ局やスポンサーである巨大資本の意向があることを、多くの国民は知った」
「財政負担をはじめとする様々なリスクを開催地に押しつけ、IOCは損失をかぶらない一方的な開催契約や、自分たちの営利や都合を全てに優先させる独善ぶりも、日本にとどまらず世界周知のものとなった」
「巨大資本」「IOCの傲慢さ」など問題点は多い。今回の東京五輪を契機に率先して日本は問題点の解決に努めなければならない。
なお朝日新聞は東京五輪のスポンサーである。その観点からの自己批判も社説に入れるべきだろう。その点は残念だった。
逆境下で苦労するのはアスリートたち
産経社説も朝日社説と同じ大きな1本社説だった。
その産経社説は「日本勢の金メダルは世界3位の27個で、1964(昭和39)年東京五輪と2004年アテネ五輪の16個を超えた。銀14個、銅17個を合わせた計58個も史上最多だ」と書いたうえで、選手たちをこう讃える。
「開催の可否をめぐり世論が割れた中で、精神面でも不安定な立場に置かれたはずだ。それでも開催を信じ、鍛錬を続けた選手たちの道のりには、メダルの色や有無を超えた価値がある」
1年延期したうえに開催するかどうか意見が2つに割れる。そんな逆境下で苦労するのはアスリートたちである。選手の活躍があってこその五輪だからだ。
ただし、産経社説のように選手の立場から一方的に論じると、開催賛成しか見えてこなくなる。開催に懐疑的な社説は書けなくなる。朝日社説は開催に反対のスタンスであっても、「アスリートたちの健闘には、開催の是非を離れて心からの拍手を送りたい」とエールを送ることを忘れていなかった。