ご存じの方も多いですが、私も2年前にあるテレビ局で韓国の人を無神経に揶揄、かなりの差別的発言をしました。これは韓国の方を傷つけたのは当然ですが、テレビ局や所属事務所、共演者の方達にも多大なご迷惑をかけました。
しかし言い訳をさせていただれば、私は今の夫も韓国人で、その前に交際した方も韓国人でした。こんなの言い訳になるかどうかですが、私は韓国に家もあり、夫の友達も可愛い親戚の子みたいなもので、半ば自分も韓国人になった気分でいたのです。身内いじり、自虐ネタのつもりでした。
私は岡山県の生まれ育ちで、しょっちゅう「岡山の男はみんな初体験の相手がヤギ」だの「いまだに日本円が流通してなくて通貨は貝殻」だの、岡山ネタをよくテレビでもしゃべっています。
今もって、岡山県から抗議がきたことは一度もありません。本気にする人がいない、完全に嘘とわかるのもありますが。何より私が岡山県民で、書く小説がだいたい岡山県を舞台にしているので、「そうはいっても岡山県を愛している」のも伝わるからでしょう。
大いに勘違いした私は、それを愚かにも軽薄にも韓国にも当てはめてしまったのです。これに関し、当事者たる韓国の方からもお叱りを受け、韓国人への差別や偏見と戦う日本の良心的な方々からも非難されました。
それは今となってはありがたいことだと感謝すらしておりますが、騒動となったときは違いました。かなり不貞腐れ、その方達への反感や反発すら強めていったのです。
本当の反省を促してくれた恩人
それを吹き飛ばしてくださったのが、在日韓国人の星の一人である元プロ野球選手、金村義明さんでした。
問題化した直後に東京の某テレビ局に行ったら、彼が出演者の中にいました。昔、大阪のテレビ番組でも一緒にレギュラーを務めさせてもらい、彼の温かく大らかな人となりはだいたいわかっているつもりでしたが、それでも彼に会うのが相当な恐怖でした。
冷たくされても、怒られても、それは仕方ない。
そう、びくびくしながら挨拶に伺ったら、彼はすべて知っているはずなのに、それについては一言も触れず、いきなりぎゅっと抱きしめてくれました。
そして、笑顔でこういってくださったのです。
「ぼくら、同級生みたいなもん。同じ教室にいた、友達やん」
それで私は、卑しい逆恨みや無様な開き直りが吹き飛び、自分がどれだけ愚かなことをして多くの人を傷つけたか嫌というほど思い知りました。
そこからなんとか挽回したい、本当に韓国を好きなことを伝えていかなければならない、と決意できたのです。
もし金村さんに怒られたり冷たくされていたら、それは当然のことと理解しつつも、いろいろと小さい私はますます頑なになって反省どころか、偏見を強めるようなことになっていったかもしれません。
誰かが手を差し伸べてほしい
繰り返しますが、金村さんが怒ったり冷たくしたとしても、それは正しい対応の一つでもあります。被害の当事者が加害した相手を一生許さないというのは、心情的にもわかりますし、それでいいと支持もします。
ただ、悪者を徹底的にたたいて、水に落ちてもたたき続けて、墓を暴いてもたたくというのでは、本当の反省ができなくなってしまう。
自身の経験から、更正したいと願い、更生の余地がある人には金村さん的な誰かが、手を差し伸べてあげてほしい。そう強く願うばかりです。