中世の日本には「デスノート」が実在した。明治大学商学部の清水克行教授は「当時の僧侶たちは、敵の罪状、名前、日付を書いた紙を仏前に捧げ、災厄が降りかかることを祈ったという。ただし、こうした呪詛の事例は室町時代以前にはあまり見られない。昔の人々がつねに迷信深くて純朴だったと思い込んではいけない」という――。

※本稿は、清水克行『室町は今日もハードボイルド 日本中世のアナーキーな世界』(新潮社)の一部を再編集したものです。

僧侶の絵
写真=iStock.com/Grafissimo
※写真はイメージです

「呪いはきわめて効果的だった」ワラ人形の使い道

先日、ネット通販のアマゾンで「ワラ人形」を売っていることを発見した。「本、ファッション、家電から食品まで」と銘打っているが、まさかこんなものまで買えるとは。

私が気に入ったのは、1800円の逸品。備考欄には「国産わら使用」、「一点ずつハンドメイド」、「よく一緒に購入されている商品」欄には「丸釘150ミリ」と、いろいろツッコミどころ満載である。

販売会社の名前が「ジョイライフ」というのもイカしている。けっこう売れているらしく、カスタマーレビューの評価も高い。「すっごくいいです」、「効果はありました」、「概ね満足」といったコメントが並んでいて、いつか必要となる日のために、思わず私も買ってしまおうかと思ったぐらいである。

ちなみに現在の日本の法律では、ワラ人形を使用して、憎い相手を死に追いやっても、決して殺人罪には問われない。相手の死と呪いの因果関係が科学的に立証されないからだ。おかげで、こうしてネット通販でも安心してワラ人形が買えるわけだし、こうして「商品」の紹介をしても当局から怒られることもないのである。

ただし、くれぐれも五寸釘を刺したワラ人形を相手の家の玄関先に晒したり、呪詛していることを相手に告げたりはしないように。そこまですると、さすがに現代社会でも脅迫罪が成立してしまうので要注意である。あと、他人の所有する土地に夜間に立ち入って、ワラ人形に釘打ちするのも、不法侵入罪や器物破損罪が適用される恐れがある。呪詛はあくまで自宅敷地内で行おう。

ともあれ、現代社会においては“呪い”と“殺人”のあいだには“科学”という大きな壁が立ちはだかり、その隔たりは決して小さくない。

いま挙げた諸注意さえ守れば、呪詛自体が罪に問われることはないし、そもそも呪詛したところで、その効果があるかどうかは保証の限りではない。ところが、500年前の社会において、呪いはきわめて効果あるもの、と考えられていた。

今日は、そんな「呪い」をめぐるお話。