送り手ではなく、受け手が情報を選ぶ時代になった

デジタルの大きな特徴は、情報の送り手ではなく、受け手が主導権を持って選ぶことができる点だ。テレビとYouTubeを比べればわかりやすい。

タブレット
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

テレビには番組表があり、それに沿って放送する。家に帰ってテレビを点けても観たい番組があるとは限らない。しかしYouTubeなら観たい時に観たいものが観られる。ネットフリックスもそうだ。映画館は作品ごとに上映開始時間が決まっているが、ネットフリックスならそういう縛りが一切存在しない。途中で見るのをやめて、後でそこから再開することもできる。

新聞や雑誌が提供してきた活字情報にしてもそうだ。スマホ上では、個人が発信する情報もメディアが発信する情報も、さらには動画や写真などのコンテンツもすべてがフラット化されている。だから競争が激しい。コンテンツ提供者は、スマホ上で限られた時間をいかに奪うか、しのぎを削っている。

「東洋経済オンライン」(東洋経済新報社)、「デイリー新潮」(新潮社)、「現代ビジネス」(講談社)、「NEWSポストセブン」(小学館)など、出版各社も続々とデジタルに進出している。

競争が白熱すれば悲劇が起こりかねない

そこでPVを巡る熾烈な戦いになる。何が起こるか。

私が思い出したのは、1980年代の写真週刊誌戦争だ。「フォーカス」(新潮社)に続いて、「フライデー」(講談社)、「エンマ」(文藝春秋)、「タッチ」(小学館)、「フラッシュ」(光文社)が創刊され、部数を争って、記事はどんどん過激なほうにエスカレートした。

そして行き着いた先が、ビートたけしとたけし軍団によるフライデー襲撃事件だ。

当時芸能人の私生活を追いかけることが写真週刊誌の仕事のひとつとされていた。フライデーの記者はたけしさんが交際していたとされる専門学校生への取材を強行した結果、女性は全治2週間の怪我を負う。それに腹を立てたたけしさんは、たけし軍団を引き連れ、講談社内にあるフライデー編集部に押しかけ、そこにいた編集部員たちに暴行を加えたのだ。

以前からたけしさんは、フライデーの取材手法が腹に据えかねていたのだろう。事件後、たけしさんには、懲役6カ月、執行猶予2年の判決が下された。その後、写真週刊誌ブームは瞬く間にしぼんでいった。