高齢者の介護支援は「認知症」との戦いになる。ケアマネジャーの岸山真理子さんは「認知症患者のなかには、料理や買い物など自分のことはできるのに妄想によって自立した生活ができなくなる人がいる。私の担当した男性も20年来の友人らを急に罵倒するようになった」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、岸山真理子『ケアマネジャーはらはら日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

声を上げる男性のシルエット
写真=iStock.com/caracterdesign
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デイサービスに失禁状態で来る90歳の女性

センターの始業時刻は朝8時30分だが、私はその40分前に出勤して、トイレを掃除し、事務所に掃除機をかけ、花の水を取り替え、職員4人の机を拭く。深呼吸をして精神統一を図り、パソコンを立ち上げ、本日の予定を確認。

40分前出勤でないと、精神状態が落ち着かないので仕方ない。時間の余裕が自分を救ってくれるのだ。8時30分、職員が揃い、ミーティング開始。各人が関わっている相談者への支援の進捗状況を報告し合う。それぞれの1日のスケジュールを伝え合った後、仕事開始となる。

この日は、9時15分に事務所を出て、居宅介護支援事業所のケアマネとともに、90歳の認知症の女性の家を訪問する。ケアマネの後方支援である。90歳の女性は娘と2人暮らしだった。

ケアマネによると、彼女はデイサービスに失禁状態でやってくるので、デイサービスで着替えと洗濯をしているという。ケアマネは真夏の1カ月間だけでも、老母を老人保健施設に入所させて、脱水症状や熱中症、栄養失調から守りたいと言った。

ただ、娘が反対しているという。今日は娘を説得するための訪問である。

「母を施設に入れたら、捨てられたと思っちゃいますよ。年金も少ないからお金だって払えないし……」

娘は臆病そうなタイプの人だった。玄関の外、立ちっ放しでの話し合いになった。認知症の老母は土間で猫と遊んでいた。担当ケアマネが必死に娘を説得した。私は合間に提案を投げかけた。娘はのらりくらりと断った。