ファンたちが言葉の壁を取り払う
とはいえ、海外ファンにとって大きな障壁となるのが「言語」の問題であろう。海外ファンにとっては情報を得るにも翻訳が必要となり、その一つひとつの作業は応援活動のネックとなってくる。
しかしK-POPは、言語の壁も取り除く工夫がされている。MV公開と同時に多言語で公式字幕をつけ、TwitterやInstagramで他言語を併記していることもザラだ。
ダウンロード数1億を突破している(昨年12月基準)K-POPファンお馴染みの動画配信サービス「V LIVE」では、公式がつけた字幕、自動翻訳字幕(現在は9言語に対応)のほか、「ファンサブ(=ファン字幕)」が認められている。
ファンサブとは、“ファンがつけた字幕”を意味する。元々ドラマやアニメの分野でも愛好家によって昔から行われていたが、その多くは公式に認められておらず海賊版として流通していた。それを大胆にも公認したことで、V LIVEは海外ユーザーにも広まった。今では利用者の85%が海外ユーザーが占めている。
字幕をつけたファンにアプリ内での昇級・賞与システムを適用することで、本来翻訳家に頼まなければならない膨大な予算を節約しながら、ファンと手を取り合って言語障壁をなくしてきた。
「5つのバリアフリー」がK-POPを世界に押し上げた
K-POPから配信されているコンテンツはどれもVPN無しでどこの国からも視聴できるので、インターネットさえあれば「制約」を受けずにリアルタイムで楽しむことができる。その上、こうしたMVからライブ配信、リアルバラエティまでネット上の映像コンテンツは無料で公開されているのでライブに行くまでは無料で楽しめる環境だ。
そして、それらの映像はファンの間でどんどんシェアが可能であり、ネット上に残り続けているのでいつからハマっても後追いが可能だ。こうしたお金・時間・距離・言語・制約の「5つのバリアフリー」によってK-POPは沼落ちしやすい環境が整っているわけだ。
K-POPが世界的な人気を誇る理由として、音楽性やパフォーマンスのクオリティの高さ、本人たちのタレント性はもちろん大きな要因であることは間違いない。
だが、K-POPの海外輸出の試みが少し前の世代から行われていたにもかかわらず、現在になって一気にK-POPがグローバルな人気を収めることができた理由は、こうした細やかなSNS運用が絶大な効果を生んだ結果である。
ファンを飽きさせない供給量の多さ、多言語対応、有料化によってゾーニングしないアクセスのしやすさは、K-POPの飛躍を語るうえで無視できない。
そして、K-POPの「バリアフリー」はSNSをはじめとするニューメディアが実現させてきた部分が大きい。