若者たちの犠牲を忘れてはいけない

低リスクの若年者がこうむった大損害も見逃すわけにはいきません。先述の厚労省資料によると、死者数で見れば30代は27人、20代は8人、そして19歳以下は0です。

子供たちに被害がほとんどないにもかかわらず、休校が強要されました。為政者のパフォーマンスとしての側面が強く、若者の学びや出会いといった貴重な機会がその代償となりました。その年齢でなければ行えない運動会、学芸会、修学旅行も卒業式も中止になりました。

親戚や知り合いの方の大学生は、入学以来オンラインでの講義が続き、友人もいない、孤独な学生生活を送っています。リアルな学園生活が失われ、コロナ禍で悪化した景気によって就職活動も混迷を極めています。

クリニックには、悲惨な状況の子供たちがいました。一度も会ったことのない友達とオンラインでプレゼンテーションファイルを作って、学園祭をするように学校に言われて体調を崩したとのことでした。PCに触ることもなかった子供たちが、心身の体調を崩すのは当たり前のことです。組んずほぐれつ遊びあって成長する子供たちに、コンピューターの作業を強要して何が教育でしょう。ひどい話です。

出会いも減って、恋愛の機会も失われたことでしょう。結婚式を延期せざるを得なくなったカップルもいます。子供の出生率も下がりました。失職や貧困などによる自殺者も多数にのぼりました。

彼らは年長者のための被害者たちでした。健康的な若者による人口増加は、国力の源泉です。教育は日本の未来の繁栄に必須のものです。壮年期の労働者は国を支え、未来への明るい希望は消費を生みます。

人口減少に拍車がかかったのは危惧されるべきで、早急に解決すべき問題です。若者の犠牲や自殺は全体のために仕方のなかったものとして放置され、フェードアウトしてしまいそうです。悲しい限りです。

これ以上若者の未来を奪ってはいけません。

渋谷のスクランブル交差点を渡る人々
写真=iStock.com/7maru
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「東京オリンピックメソッド」は私達や世界に希望を与える

専門家会議は「オリンピックをやる意味がわからない」(※16)と明言しました。私は東京五輪・パラリンピックの開催は何ら問題ないどころか、大きなメリットを生み出すと思っています。

この祭典は、コロナと共存して人間が立ち上がっていくことを証明する機会になるでしょう。今後のイベント開催のお手本にもなるはずです。2022年2月には北京オリンピック、11月にはカタールでサッカーのW杯もあります。東京オリンピックが成功例となれば、検疫から観戦まで「東京オリンピックメソッド」が、世界の人々から参照されることになるでしょう。

甲子園で活躍する母校を屋内のモニターで、しかも密な状態で観戦・応援することは禁止されていないのに、五輪では換気の問題がない屋外のパブリックビューイング(PV)を中止にしたのでしょうか。私は大きな機会損失だったと思います。