「排除・孤立層」は、社会から切り離された存在

一人が好きならそれでいいじゃないか、という風潮がある。本当にそうだろうか。石田教授はこうも言う。

早稲田大学の石田光規教授
早稲田大学の石田光規教授

「一人でいることを望む、望まないといった単純に分類することには無理があります。例えば勤め先の倒産や離婚、友人の裏切りを経験した結果、一人でいることを望む人は“望んでいる孤立”といえるのでしょうか」

石田教授は、非正規または無職、女性は配偶者なし(アンダークラス)でかつ、親しく、頼りにする友人・知人が0人また1人の人を【排除・孤立層】としてその背景を探っている。

【排除・孤立層】では、それ以外の層と比べて、両親の離婚を経験している、いじめ・不登校の比率が高く、幼少期の本の読み聞かせ、勉強を教えてもらう経験、旅行に連れて行ってもらった経験、動物園・植物園に連れて行ってもらった経験が少ない。

「家庭環境が揺らぎ、親からあまり面倒を見てもらえない【排除・孤立層】は学校にも適応できず、友人・知人関係が蓄積されません。学校での不適応は労働市場での不適応につながるため、よい仕事につけず、経済的にも厳しくなる。結果として友人・知人はますます得にくくなる。【排除・孤立層】は、“社会から切り離された存在”なんです」

「人に迷惑をかけられない」という思いが人一倍強い

本人は、将来の生活に不安を感じ、精神状況は良好でないケースが多いという。

それは予想通りだが、調査には、意外な事実があった。

【排除・孤立層】は、「両親に尊敬や感謝を感じない人間は最低だ」という質問に対して、「そう思う」と答えた人の比率が他のグループと差がない。また「いくら正しくても人に迷惑をかけるようなことをしてはいけない」という意見に対して、7割弱の人が「そう思う」と答えている(図表1)。つまり、家庭環境に恵まれなかったにも関わらず、両親に尊敬の念を抱こうとし、「人に迷惑をかけてはいけない」と強く思っているのだ。

「いくら正しくても人に迷惑をかけるようなことをしてはいけない」に「そう思う」と答える人の比率
出所=早稲田大学 石田光規教授作成

「客観的に考えれば、【排除・孤立層】の人たちは“やってもらったこと”が少ないのだから、両親に尊敬の念を抱きにくいはず。けれどもそういう結果にはなりませんでした。例えば生活保護世帯の子供は、家庭内での役割を見出すことで自己肯定をしています。親がこうだし大変だから、私がしっかりしようと思うんですね。この調査も少なからずそういった傾向があるように思えます」