アップルカーについても当然、iOSのようなOSを車に搭載し、アップルのクラウドサービスとの連携を行うことを前提として開発を進めていると見て間違いない。

すでにアンドロイドでは搭載が予定される機能になるが、OSのマップ機能と車が連動し、車の充電残量を把握した上で最も効率のいい経路での走行が可能となる。航続距離の短さというSCiBの欠点は、こうした機能によって補うことができる。

目的地までの道中で最も効率よく行けるルート上に充電ステーションを入れ込み、必要に応じ、その中で急速充電を短時間できればいいという割り切りも出てくる。よって航続距離の課題は車の「スマート化」によって補完できるわけだ。

スウェーデン・イェーテボリの駐車場で充電中のKIAニロ
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充電設備の拡充が進めば最強の蓄電池になる

そして、SCiBの弱点は、充電設備の拡充が進むことでも十分に補完される。現在、充電についてはワイヤレス充電やロボット給電など、すでにさまざまな充電形態が検討をされている。いずれの形であるにせよ、欧米も中国も具体的な数字を出して、EVの充電インフラの増強に取り組んでいる。

報道によれば、アップルカーの投入が早くとも2024年とされている。充電設備は現時点より格段に整備が進んでいることが容易に想定される。

つまり、経路上でアクセスできる充電の選択肢が、アップルカー投入時点では十分に存在するという前提で、アップルはEV戦略を構築できる。充電インフラ設備が増えるほど、駐車した先での充電が可能となる。行った先々でのエネルギー補充が可能となれば、急速充電の効果でフル充電は容易だ。

また、EVを「移動式蓄電池」として社会で活用していく次世代型の構想もある。例えばフォルクスワーゲン(VW)などはVehicle to Grid(V2G)というコンセプトを発表し、街中いたるところでEVを系統に接続し、電力の融通をし合う仕組み作りを目指していくという方向性を示している。

そのような状況下で最も重要になるのは、高容量バッテリーによる「航続距離の長さ」という論点ではなくなる。むしろ充放電に伴う電池の劣化、つまり蓄電池の寿命が最大のテーマになるだろう。であればSCiBの致命傷は癒え、長寿命・急速充電という長所が最大限発揮されることになり、車載に最も適した蓄電池のポジションになる。

急速充電、長寿命という武器

現時点で、EVはガソリン車と対抗するため「航続距離」を重視せざるを得ない。そのため、航続距離が長い蓄電池のシェアが拡大する。

しかし、2024年以降に登場が目されているアップルカーであれば、2024年以降の状況を踏まえたEV戦略を考えればよい。OSによる効率化や充電インフラの拡充を前提に、最も適合する蓄電池を採用するのがアップルの蓄電池戦略となる。