「お前と一緒だと面白くない」「周りが疲れる」
今、新しい部門のリーダーとして、また役員として大事にしていることが2つある。1つは皆に成長の場を用意すること。異動の原動力にもなったこの思いは、今もまったく変わっていない。ただ、ポジションが上がったことで、チームメンバーだけでなく顧客企業やユーザーに対しても、成長や発展の機会を提供しようと心がけるようになった。
もう1つは、仕事や生活の中に“遊び”の部分をつくること。これは20代の頃からずっと肝に銘じているという。早く成長したくてがむしゃらに頑張っていた新人時代、先輩から言われた一言がきっかけだった。
「お前と一緒の仕事は面白くない」。顧客へのプレゼンからの帰り道、突然そう言われて阿部さんは大ショックを受けた。仕事もプレゼンも型通りすぎて遊びや余裕がない、がむしゃらすぎて周りが疲れるんだよね──。
成果を出そうと必死になりすぎていたのだろう。当時の阿部さんのプレゼンは、事前に分刻みの計画を立て、その流れに沿ってひたすら売り込みを続けるスタイル。顧客の意見を聞く余裕もなければ、新しい視点が生まれる余地もまったくなかった。
「すっかり反省して、以降は“遊び”を大事にするようになりました。今もプレゼンや打ち合わせの際は、議題のほかにムダ話をしたり意見をもらったりする時間を必ずとるようにしています。これは、お互いへの理解が深まったり新しいモノが生まれたりするきっかけにもなっています」
勝手に頑張りすぎて自分の首を絞めていた
こうした遊びの部分への意識は、プライベート面でも役に立ったという。30代前半には育児と仕事の両方を完璧にこなそうとして悩んだこともあったが、夫の「その場その場で互いにできることをやっていこうよ」という言葉で、フッと肩の力が抜けた。
「結局、勝手に頑張りすぎて自分で自分の首を絞めていたんです。いちばん大事なのは楽しむことで、そのためには時には人にも頼って、遊びの余地を残せるよう自分なりのバランスを見つけなきゃ。息子にも、ハッピーじゃない姿より楽しんでいる姿を見せたいですよね」
今、その息子は14歳。子育てを通して学んだことは、リーダーとして人材育成を担う上でも役立っている。成長機会をつくり人を育てること、さらには発展の機会を提供し相手を豊かにすること。入社から10年が経ち、阿部さんは「ようやく自分がやるべきことの軸が見えてきた」と語る。
「私はずっと、組織や社会に何かしら貢献できる人、役に立つ人でいたいと思ってきました。そこに必死になりすぎた時期もあったけれど、私なりのバランスを見つけてからは、自分の役割を楽しむ余裕を持てた気がします。今後も、楽しみながら仕事に取り組んでいきたいと思います」
■役員の素顔に迫るQ&A
Q 好きな言葉
天才は努力する者に勝てず、 努力する者は楽しむ者に勝てない
「何かしら笑ったり楽しみを感じたりできるものが好き。仕事でも何でも、まずは楽しむことがすごく重要だと思っています」
Q 愛読書
『英雄の書』黒川 伊保子
「人生を切り開く方法を教えてくれる本で、私のバイブル。読み返すたびに勇気をもらっています」
Q 趣味
読書、ハングル語の勉強
Q Favorite Item
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