男女格差と出生率を結びつけるのは無理がある

中には、フランス、イギリス、スウェーデン、ドイツ、アメリカ、デンマークという国だけを作為的に抽出し、それに対して日本と韓国はランキングが低いから出生率が低いのだという論も見かけたのですが、国ってその8カ国だけなんでしょうか? 先進国に限定という注釈があったのですが、先進国も8カ国だけでしょうか?

先進国の定義は、世界銀行によれば、「1人当たりのGNI(国民総所得)が1万2235米ドル以上」(2018~2020年)としています。それにのっとり、「ジェンダーギャップ指数」と合計特殊出生率の先進国相関を求めてみました。

結論からいえば、先進国だけを抽出した場合では両者の相関係数は▲0.19919。ほぼ相関はないといってもいいと思います。さらに、全対象国でみた場合では、相関係数は▲0.42265となり、むしろ男女格差が改善されればされるほど出生率は低くなるというやや弱い負の相関すらあります。要するに、「ジェンダーギャップ指数」と出生率を結びつけるのは無理があるのです。

女性の就業率との関係も同様です。以下に、「ジェンダーギャップ指数」ランキングにおいて常に上位に位置する北欧3国と日本の比較グラフを作成しました。パートを除く女性の就業率推移も合わせて、「ジェンダーギャップ指数」の記録がある2007年以降をまとめています。

ジェンダーギャップ指数や就業率は出生率とは関係ない

“男女平等”北欧3国が示す現実

北欧は、「ジェンダーギャップ指数」が年々改善されているにもかかわらず、出生率は下がり続けています。パートを除く就業率に関して言えば、スウェーデンと日本はむしろ女性就業率が上がれば出生率が減るという負の相関すらあります。

日本では、出産ボリューム層の25~34歳女性の就業率が上がれば上がるほど出生率は減ります。当該年齢の就業率と平均初婚年齢の上昇も完全にリンクします。よく考えれば当たり前で、この年代の就業率の上昇はすなわち晩婚化を意味するからです。