つまり、「ジェンダーギャップ指数」が改善されれば出生率は上がるなどと統計上は到底言えません。そもそも、政策によって少子化が是正されることはありません。出産に対する金銭的なインセンティブを与えて一時期的に出生率が上向く場合もあるでしょう。しかし、人口転換メカニズムに基づけば、本質的には、「乳幼児死亡率が下がれば出生数は必ず減る」のです。

乳児死亡率が下がれば、出生率は下がる

乳幼児が死なない国になったことを意味する

事実、現在でもアフリカなど出生率が高い国々はまだ医療体制が盤石ではなく、そのため乳幼児死亡率も高い。母親が多数の子どもを産むのは、産んだ子どもを幼くして亡くしてしまうからです。

日本をはじめとする先進諸国の乳幼児死亡率は限界まで低く、生まれた子は、ほぼ無事に成人します。裏返せば、「少子化になるということは、生まれた子どもが死なない国になった」ことを意味します。それは悪いことではありません。

親の指を反応で握る新生児
写真=iStock.com/minianne
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それでも、「出生率とは関係なく、日本の男女の所得格差はあるのだからそこは是正すべきだ」という声もあります。それが事実なら確かに是正されるべきでしょう。しかし、そういう人たちが持ち出すデータというのは国税庁の「民間給与実態調査」や厚労省の「賃金構造基本調査」などですが、あれは正規/非正規、未婚/既婚が合算されています。

既婚女性は非正規労働比率が高いため、総数で見ると女性の賃金が低くなってしまうのは当然です。一概にあのデータをもって男女で賃金格差があると言えるでしょうか?

条件をそろえてみると興味深い結果が

例えば50代をひとくくりにして男女所得格差を比較すると、図表3の左のグラフのように、明らかに男性の所得が女性を大きく上回ります。が、これを50代の正規雇用未婚男女だけに絞って抽出すると、右のグラフのように、男女ともほぼ所得構成は変わりません。40代で比較しても同様です。

さらに、50代世帯主の世帯所得を夫婦の有業無業にかかわらず2人分の所得であるとみなし、単純に二等分して一人分換算の所得として区分けると、これも正規未婚男女の所得構成比とほぼイコールになります。