男性には気管挿管(気管にチューブを挿入して、肺に酸素を送る医療行為)など救命措置がとられたものの、呼吸をつかさどる脳幹部から大量の出血(脳出血)があった。あとから駆けつけた家族は、手術をしても命が助かる見込みが非常に低いと聞き、積極的な治療を見送った。

一方で、医学的にやれる範囲のことをすべてやったとしても、健康といえるレベルには戻らない、話もできないし、何か言ってもうなずくことさえできないでしょう──医師からそのように説明されてもなお、治療を終える決断ができない家族が少なくない。

無駄な延命治療はしない

難しいことを考える必要はなく、「無駄な延命治療はしない」など、大まかに決めるだけでも救急現場は対応がしやすい。ぜひ家族と1度話してほしい。

突然「人生の最期」が訪れたら…意思表示チェックリスト

さて、一般市民が救急医療に対してできることとして、「終末期の治療の意思を決める」ほか、あともう1つ「目の前で人が倒れたときの対応」がある。傷病者に声をかけて反応がなければ、周りの人に119番通報してもらった後、即座に心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行うか、傷病者にAEDを迅速に装着してあげよう。心臓と呼吸が止まってから1分経過するごとに、救命率はみるみる下がり、4分経過で救命率50%ともいわれる。しかし119番に通報してから救急車が現場に到着するまでにかかる時間は10分程度。救命の可能性は、救急隊を待つ間に現場に居合わせた人(バイスタンダー)が応急手当てを行えるかどうかで大きく変わる。

新型コロナの感染も心配であろうし、人工呼吸は行わなくていい。現在のガイドラインでは「人工呼吸は必ずしも行う必要がない」とされている。傷病者の胸と腹部が上下に動いているかを見て、呼吸をしていない(動いていない)ようなら、躊躇なく胸骨圧迫を。具体的には、傷病者の胸の真ん中を目安に、1分間に100回から120回、強く速く圧迫する。傷病者の胸が約5センチ沈み込む程度の圧迫と覚えよう。

心肺停止には救命可能なものと不可能なものがある。不可能なものは仕方がないが、心臓を原因とした不整脈などで速く蘇生行為を開始したものは比較的助かりやすい。やり方がわからないときには「119番通報時」に指導してもらうこともできる。地域の救急医療能力は、住民によっても高めることができるのだ。

(写真=PIXTA)
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