不便や無駄の解決にトライするのがこれからの新規事業

ウィズ・コロナにおけるさまざまな「不」に、あなたはどう対峙するだろうか。あなたが生活する日常の中で、「不」は簡単に発見することができる。たとえば、新型コロナウイルス蔓延当初、マスクやうがい薬が店頭から消えた。医療現場におけるフェイスシールドや使い捨てのガウンの不足が日々報道されていた。また、巣ごもり需要の話は枚挙にいとまがない。

当然のことながら、現在存在する商品・サービスのほとんどがビフォー・コロナ時代の産物だ。パソコンでオンラインミーティングをしていても、相手と目が合うことはなく、資料を投影すれば毎回「今、見えていますか?」と質問する。マイク付きイヤホンは、いい音で音楽を聴くには適しているが、雑音をカットして打ち合わせするには不向きである。これはそもそも、今ほど盛んにオンラインミーティングがおこなわれていなかった時代に作られた商品だからだ。

新たな生活となり、既存の商品やサービスに対して、不便なことや無駄なことが山積状態だ。この状況を「いやだな」「不便だな」「元に戻ればいいのに」と愚痴をいっているだけでいいのだろうか。あなたがどうしても解決したいと思う「不」にパワーを注げば、自分の問題も解決でき、誰かの役にも立ち、ビジネスとしての勝機も見出すことができる。

そんな「不」の解決にトライするのがこれからの新規事業である。

事業の主語はいつも「お客様」に

ただし、「不」の解決への向き合い方で一つだけ注意してほしいことがある。それは、「減った売り上げを穴埋めする」ために新規事業を作ろうとしてはいけない、ということだ。新型コロナウイルス蔓延の影響で多くの業界や企業が、厳しい局面に立たされている。その辛い心情は、僕も十分に理解しているつもりだ。

しかし、自社の穴を「補塡」するために、新たなことを始めようと考えると間違いが起こってしまう。「補塡」するという時の主語は、「自社」になる。でも、本来事業でしたいことはお客様にとっての「不」の解決のはず。お客様に自社の穴を埋めてもらうのではなく、喜んでもらうことを最大の目的にしなければ事業の道がそれていく。

新規事業はそう簡単なものではない。ビジネスを作っていく中で、何回も窮地に立たされるので、強い信念がなければ絶対に続かない。目的をズラして、自分や消費者をごまかすようなことをすれば、どこかで息切れしてしまう。そして何よりも、そもそもそんな事業では、お客様の心をグッと摑むものなどできるわけがない。