世界の潮流は「集中管理」から「分散管理」だが…

デジタル改革関連法が成立し、菅義偉首相肝いりの「デジタル庁」が9月1日に発足することになった。

参院本会議でデジタル改革関連6法が成立し、一礼する平井卓也デジタル改革担当相(右)=2021年5月12日、国会内
写真=時事通信フォト
参院本会議でデジタル改革関連6法が成立し、一礼する平井卓也デジタル改革担当相(右)=2021年5月12日、国会内

菅首相は「長年の懸案だったわが国のデジタル化にとって大きな歩みとなる」とデジタル庁創設の意義を強調するが、これを額面通りに受け止めることができるような単純な話ではない。

デジタル化がもたらす利便性の陰で、政府が国民の個人情報を自在に収集・保有・活用できる道を広げるものであり、言い換えれば「一億総プライバシー侵害」が現実味を帯びてきたともいえる。国家による個人情報の「集中管理」が進み、「監視社会」につながる危険性を覚悟しなければならないだろう。

個人情報を保護するためのチェック機能は脆弱ぜいじゃくなままで、情報漏洩や悪用の懸念は高まる一方だ。知らないうちに、自分の情報が漏れたり悪用されたりしているのではないかという不安がつきまとう。これでは、安全安心なデジタル社会は期待できるはずもない。

個人情報をめぐる世界の潮流は、さまざまなリスクを避けるため、「集中管理」から「分散管理」に移ろうとしている。世界に遅れた「デジタル劣等国」の拙速な改革は、さらに周回遅れの「デジタル敗戦国」を生みかねない。