給付金も消滅する「ステルス独身税」

これは、家族には適用される配偶者控除や扶養者控除などの税金の各種優遇が独身者にはないことが大きい。いってしまえば、目に見えない「独身税」のようなものです。しかし、これは単身独身者にとっては死活問題で、例えば34歳までの単身男性は非消費支出が1カ月あたり前年比9000円弱増えましたが、これは年間にすれば10万5300円になります。

お金
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つまり、あの10万円の一律給付金はすべて税金や社会保障費の増額分で消えてしまったわけで、ある意味1円も給付金をもらっていないに等しいのです。

単身者で、会社の給与明細を毎月チェックする人も少ないし、家計簿などをつけている人も少ないでしょう。本人ですら気づいていない、この「ステルス独身税」によって、単身者は家族に比べて貯金ができない状態に追い込まれています。

同じコロナ禍で、同じ10万円の給付金をもらっていたとしても、独身と家族は決して公平なわけではありません。二人以上世帯だけが、国民全部を代表するという統計の切り出しをしてしまうと本当の現実を見誤るというのはこういうことです。

少子化の最大の原因は、結婚した夫婦が子を産まないことではありません。婚姻数の絶対数の減少こそが少子化に直結することは統計上明らかです。実際結婚した夫婦は、今でも全体的には2人の子を出産しています。言い換えれば、理論上は婚姻数を1つ増やせば、プラス2人の子どもが純増する計算となります。政府の少子化対策においても近年ようやく婚姻数の増加の課題を取り上げるようになっています。

彼らは「社会のフリーライダー」ではない

その一方、「金がないから結婚できない」という未婚男性の声もあります。婚活の現場では、今なお年収の低い男性が足切りされてしまっていることも事実です。東京など大都市を別にすれば「年収300万円の壁」という定説も存在します。要するに、“年収300万円稼げない男は結婚できない”ということです。

収入が上がらない上に、独身者へのこうした高い税負担があることは、かえって彼らを、結婚どころか恋愛すらする暇もないほど日々の生活だけで精一杯な状況に追い込む羽目になっていやしないでしょうか。

今までご説明した通り、むしろ独身のままより結婚した方が経済的には優遇されます。しかし、経済的に余裕のない独身者はそんな広い視野は持てないものです。皮肉なのは、ある一定以上の収入を確保した層だけが結婚して子を産むことができ、なおかつ、税制的にも優遇されるという現実になっています。