「預貯金が増えた」と話題になったが…
先日、2020年の家計調査が発表され、コロナ禍での消費の動向が明らかになりました。巣ごもり消費が好調などと言われもしましたが、全体の消費は大きく減少しました。ほぼ年間を通じて、外食や旅行などのいわゆるハレ消費が制限されたのですから当然と言えます。
一方で、預貯金が大きく増大したことも話題になりました。日本経済新聞は、「所得に対する貯蓄の増加の割合を示す平均貯蓄率は35.2%と前年度比3.2ポイント上昇した。新型コロナウイルスの影響で外出自粛が余儀なくされ、お金が貯蓄に向かっている」と報じています。さらに、「ゴールドマン・サックス証券の推計によると、2020年の預貯金総額は、国内総生産(GDP)の7%近い水準に相当する36兆円にも達する」とも紹介しています。
こうした事実を見ると、昨年の国民一人当たり10万円の一律給付金は、そのまま預貯金口座に収められたのではないかとも思えます。先行きが不透明な不安の中で、もらった金額を将来のための貯金に回すという心理は理解できますし、そもそも、自粛や時短などで消費する機会が奪われたという見方もできます。
単身世帯は支出も預貯金も減っている
しかし、こうしてテレビや新聞で取り上げられるデータは、いつも家計調査のうちの「二人以上世帯」、つまり家族世帯の数字だけです。ひとり暮らしの単身世帯の数字は一切含まれていません。確かに、かつて昭和の時代は、世帯のほとんどが複数世帯でしたからそれでよかったのでしょう。そもそも単身世帯の正式の調査結果も2007年以降からしか存在しませんでした。
とはいえ、よくよく考えていただきたいのは、世帯数では単身世帯約1490万に対し、夫婦と子世帯は約1470万と単身世帯の方が上回っています(2019年国民生活基礎調査)。もはや無視できない規模にまで拡大した単身世帯の数字を透明化して、本当に日本の現実を分かったような気になっていいのでしょうか?