4割の企業で制度が周知されていなかった
制度は充実しているのに男性の育休取得率が低いのは世界から見たら不思議な国だろう。しかも近年は共働き世帯も増加し、育休取得を希望する男性も増えている。
にもかかわらず男性の育休取得を阻んでいるものは何か。連合が未就学の子どもがいる全国の20~59歳の有職者の調査をしている(「男性の育児等家庭的責任に関する意識調査2020」2020年11月16日発表)。それによると、実際に「取得したかったが、取得できなかった」男性が31.6%もいた。また、育児休業を取得しなかった男性の理由として最も多かったのは「仕事の代替要員がいない」(53.3%)。次いで「収入が減る(所得保障が少ない)」(26.1%)、「取得できる雰囲気が職場にない」(25.6%)、「取得するものではないと思う」(10.4%)、「取得すると昇進・昇給に悪影響が出る」(7.2%)、「仕事のキャリアにブランクができる」(6.7%)と答えている(複数回答)。
収入に関してはユニセフの評価もあるように雇用保険から賃金の67%が育児休業給付金で支給され(180日、以降50%)、非課税で社会保険料も免除されるため手取額ベースで8~9割カバーされる。それ以外では取得したくても育休取得に無理解な企業・職場が多いことを示している。驚くのは「自身の勤め先で育児休業等の制度が周知されていない」との回答が39.4%もあったことだ。
今回の法改正の周知の義務化で改善されることを期待したいが、いずれにしても「男性育休後進国」日本の実態を物語っている。
人事部は改正法を高評価
ところで今回の法改正の内容を企業側はどう見ているのだろうか。大手建設関連会社の人事部長は「従来の法律はあまり柔軟性がなかったが、今回の新制度は産後休暇中の就労を認めており、結構柔軟な仕組みになっている気がする。また、子どもにある程度手がかからなくなれば仕事もできるし、今のコロナ禍であれば自宅でWeb会議も可能になる。改正法によって取得率は今まで以上に上がるのではないか」と語る。
ただし、改正法では個別の周知や意向確認措置が義務付けられたが、それによって育休が進むにはまだまだ運用上の課題もあるという。
「上司が単に本人に育休取得を投げかけるだけでは、その効果は今までと変わらないかもしれない。上司によっては男性育休に対して快く思わない人がいるのも確かだ。
育休を推進するには、人事と上司、本人が三位一体となって取り組むような仕組みを考える必要がある。たとえば職場ごとに育休取得に取り組んでいるかどうか、具体的な取り組み方法についてのアンケート調査を随時実施し、人事がチェックするような仕組みが必要だ。
また、育休を取得したことによる昇給・昇格などで不利益にならないようにするなど、制度に合わせた企業の取り組みのためのルールづくりが必ず必要だ。何よりも男性育休を推進するには経営者が積極的に関わることが不可欠だろう」