「変わらなきゃ」という気持ちそのものが、変わる

手を抜くことに似た話ですが、自分を良くし続けるのって大変だと思うんです。「楽しいからもっとやりたい」のはいいけれど、「自分のこんなところがダメだから、もっともっと良くしなければ」と自分を向上させ続けるのは、坂道を登り続けるようなしんどさがありますね。

深刻な悩みがあるときは、その状況から一刻も早く抜け出すために、自分と向き合ったりカウンセリングを受けたり、「こうしたらいいよ」というハウツーを試してみることも必要です。でも、深刻な悩みが山を越え「なんとなくもう大丈夫そうだな」と感じるようになったら、自分を良くしていくこと、つまり自分を治すのは終えるタイミングなんだと思います。

カウンセリングを受ける女性
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです

私は子育てが始まってものすごく悩んだ時期がありまして、「これは自分ひとりではどうにもならない」とカウンセリングに通ったんですね。2年ぐらい通って、自分の幼少期の思いやトラウマに取り組み、生きることそのものが本当にラクになりました。ところが、峠を越えたあとも「先生からみればまだダメなところがあるだろうから」と通い続けるうちに、だんだん元気を失っていったんです。

まるで、ちいさな虫歯をなくそうとして、歯そのものをガンガン削っているような……いつまでも自分を否定し続けているような、そんな気分になりました。

困っていたときには有効だったカウンセリングも、そんなに困っていないのに受け続けるうちに、悪さをし始めた。

「先生からみればまだまだかもしれないけど、私の体感としては充分平和になったし、この辺でもういいだろう。また心底困ったら、相談に行こう」。

思い切ってカウンセリングに行くのをやめると、しおれた花がたっぷりの水を得たように、みるみる元気になりました。

人間の変化には様々なバリエーションがあり、「変わらなきゃ、変わらなきゃ」と思っていた人が「変わらなくても良いんだ」と思えるようになる、という変化のしかたがあります。