同社の創業者で台湾にルーツがあるトニー・シェイは、典型的な「右脳型商品」である靴をインターネットで売るために、届いた靴が足に合わなければ無料で返品できるシステムを築いていた。これだと顧客は3足くらい注文して試し履きをし、一番フィットしたものだけを購入して残りは送り返せる。しかも、一回購入すればザッポスの扱う靴と自分の足との相性がわかり、このデータベースを賢く使えば2回目以降は返品率がグッと下がる。後追いの会社は常に返品リスクに悩まされるので、先行するザッポスが相対的に有利となる。

しかもこのザッポスは顧客想いの企業で、就職したい企業ランキングでトップになったことがあるほどの人気企業だ。ザッポスには有名なエピソードがある。ある人がザッポスで靴を3足注文したが3足とも返品をした。ザッポスの社員が返品理由を電話で尋ねると、返品者からは「実はお母さんのために靴を注文したのですが、お母さんが亡くなってしまって返品しました」と返答があった。返品自由と言っているからザッポスは何も文句は言えないが、ザッポスはそういう発想ではなく、母を亡くしたという返品者に花束を送ったという。こういう感動的な企業がアメリカにあったのだ。

この成功企業を知ったベゾスは、ザッポスを2009年に約12億ドルで買収したのだ。この返品自由のシステムを活用することでアマゾンは右脳型商品も売れるようになったし、知名度も上げることになったのである。

ベゾスが0からアマゾンを起業した「構想力」。21世紀はそのような能力を鍛えることを、教育の柱にしなければならない。ところが、いまだに文部科学省はそれがわかっていない。彼らはまさに20世紀の発想のままで、20世紀型の教育をカイゼンすることしか考えられないから、パソコン1人1台などというピントのずれた施策が出てくるのだ。

日本の教育制度は抜本的に改革しなければならない

日本の教育制度は抜本的に改革しなければならない。まず「先生」(ティーチャー)という言葉を廃止すべきだ。先に生まれた人が答えを知っているというのが前提となっているから先生なのだが、何度も言うように21世紀は答えがない時代なので先に生まれていても意味はない。むしろ、20世紀の考えが染み付いていればいるほど、答えを教えようとするから、21世紀の教育現場にはふさわしくないのだ。

実際、教育先進国と呼ばれている北欧諸国のデンマークでは、教室で「ティーチャー」という言葉を使うことを禁止している。答えがないのだからティーチできないという至極もっともな理屈である。代わりに教室には誰がいるかといえば、ファシリテーター(促進者)。生徒が26人いれば26通りの答えがあるのが当たり前で、そこからディスカッションしながら合意形成を図っていくというのが、21世紀型の教育スタイル。答えは見つけるもの、考え出すものなのだ。そのクラス討論を円滑に進むような役割を担うのがファシリテーターだ。

このような対話型の授業を始めると、自分の考えをまとめる論理的思考力に加えて、他人から共感を得て周りの人を巻き込んでいくリーダーシップ能力も養われる。