中学・高校の部活中に起きる事故の数は年間平均35万件にも達し、中には死亡事故に至るケースもある。スポーツライターの酒井政人さんは「高校の女子チアリーディング部の練習中、下半身不随の大ケガをした元部員が今年2月、学校を訴えました。事故の責任の所在を明確にし、部活に励む生徒の向上心に応えるためにも中高の部活の管理や指導は適切な“人材”を活用する仕組みを整えるべき」と訴える――。
ポンポンを持ち、ユニフォームに身を包んだチアリーダーたち
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「女子チア部員が下半身不随」で顧問とコーチが責任逃れの背景

筆者の母校で、痛ましい事故が起きた。

愛知県の岡崎城西高のチアリーディング部の練習中に元女子部員が習熟度に見合わない危険性の高い練習をさせられ、下半身不随の大ケガをしたのは2018年7月のこと。元女子部員は2021年2月、同校を運営する学校法人を相手取り、将来にわたる介護費など約1億8300万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。

新聞報道などによると、部の男性顧問は部活に姿を見せることは少なく、外部の女性コーチが技術指導をしていたが、事故時は2人とも不在だったという。元女子部員は入部してわずか4カ月目に生徒たちだけの活動中に大技の練習をして事故に遭った。当時の練習状況は、必要な補助者もなく、マットを敷くだけというお粗末なものだったようだ。

弁護士や専門家も参加して同校が作成した事故調査報告書では、「顧問は安全指導を含む全指導を外部コーチに一任していた」との認識を示す一方、コーチは「自身は責任者ではない」と考えていたという。責任の所存がハッキリとしない状態で、安全な指導も徹底されないなかで日々の活動が行われていたようだ。

本来であれば避けられたであろう事故が起きてしまったことは本当に残念でならない。学校側は真摯な対応をするべきだろう。同時に、このような悪夢を二度と起こさないように徹底した再発防止策も求められる。