民間調査では20%以上が女性、平均年齢は40.1歳

例えば大阪市北区でホームレス支援をおこなっている認定NPO法人Homedoorでは相談者の低年齢化が年々顕著になっている。2019年度の実績では相談者の平均年齢は40.1歳。10代から30代の相談者が全体の半数を占めた。また、相談者に占める女性の割合も20%以上となった。

ここから伺えるのは、日本に存在する2つのホームレス像だ。一つは厚労省の調査で把握されているようなホームレス期間が長い高齢男性。もう一つは一般的にはホームレスとはみなされないような若年の男女だ(中には性的マイノリティも含まれる)。彼・彼女らの多くはホームレス状態の期間が短かったり、安宿や知人宅を転々としていたりする。安定した住居を持っていないという点においてはこうした人々もホームレスなのだが、一般的にはその存在はほとんど認知されていない。

つまり統計上で把握されるホームレス(狭義のホームレス)は減っているが、不安定居住層・不安定就労層(広義のホームレス)は増えていると考えられる。それもそのはず。日本社会の雇用の流動化は広がるばかりであり、地縁・血縁も弱体化しているからだ。

公的なホームレス対策は万能ではない

このように社会的つながりから排除されがちなホームレスに対して、Homedoorはネットカフェなどの深夜営業店舗やフリーWi-Fiの利用できるコンビニのイートインコーナーにポスターを掲示したり、ホームページを分かりやすく制作したりすることで、接点を生み出す工夫を凝らしている。

ここで読者は国や地方自治体のホームレス対策はどうなっているのだろうかと疑問に思われたかもしれない。確かに生存権を保障する役割を担うのは国や地方自治体である。しかし、公的なホームレス対策が万能かといえばそうではない。

当たり前の話だが、ホームレス化の経路は人によって大きく異なる。したがってホームレス状態からの脱却に向けた方法も千差万別だ。だが、公的なホームレス対策は個別のニーズに丁寧に対応することが難しい。どうしてもリジッドに設定されたルールに縛られがちなのだ。だからそれにうまくはまらないホームレスは早々に制度からこぼれてしまう。