A、B、Cのランクごとに面談の内容が違う

対象者の個別の面談に際しては、マニュアルを用意している企業もある。具体的には社員をABCの3つのランクに区分けし、対象者ごとに対応が異なる。Aランクは、今後の活躍を期待する慰留する人、Bランクは本人の選択に委ねる人、Cランクは社外での活躍を促す退職候補者だ。もちろん最大のターゲットはCランクの社員だ。

2年前、大手製造業の販売子会社の希望退職募集で面談を受けた人事課長(50歳)の女性はこう語っていた。

「私はABCランクのB、つまり退職するのは私しだいということでした。面談したのは上司の人事部長です。とくに残ってくれとか、辞めてほしいという意思は示されませんでした。私を含めてバブル世代の管理職が多いのは確かでした。上司から話を聞いたときは、なるほどね、私たちに辞めてほしいのだなという会社の意思を感じました。上司にどうする? と聞かれて『辞めます』というセリフしか出てきませんでした」

多くのバブル世代が手を挙げた

彼女自身は人事部にいてそれなりに懸命に働いてきた。

リストラせざるをえない会社の事情は理解しているつもりでも、やはり疑問も残ったと言う。

「バブル世代が多く、人口構成もいびつな構造になっていましたし、社員意識調査でもやる気のない社員が多いことも知っていました。人事にいたので私と同じ世代を含めて研修を含めた風土改革を実施し、もう一度鍛え直して戦力化していく必要性は認識していました。でも会社は明確な態度を示さないまま、希望退職者募集に踏み切りました。

そうなると、結局私たちはお荷物なのねという諦めの気持ちなり、多くの同世代が募集に手を挙げました。ただ、あと5年もすれば新卒も簡単に取れなくなるし、人手不足が深刻化したら経営者はどうするんだろうという思いもあります。また、課長クラスの慰留されるべき優秀な社員も相当数手を挙げました。その人たちが抜けたら後が大変だという声もありました。後輩に『私たちが辞めるとあなたたちにチャンスがくるからね』と言うと、一様に複雑な顔をしていましたね」